湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

今日の一文(一月二十四日)

 

菊池寛

 

上州岩鼻の代官を斬り殺した国定忠治一家の者は、赤城山へ立て籠って、八州の捕方を避けていたが、其処も防ぎきれなくなると、忠次を初、十四五人の乾児(こぶん)は、辛(ようや)く一方の血路を、斫(き)り開いて、信州路へ落ちて行った。

 

「入れ札」

 

 

凶悪な博徒として名高い国定忠治が「赤城の山も今宵限り」と言って、子分たちと別れて逃げ落ちる場面だけれども、「入れ札」の主人公は忠次ではなく、冴えない子分の九郎助(くろすけ)。

 

忠次に最期まで付いていく者を選ぶために、子分たちで入れ札をすることになったのだけど、九郎助は、入れ札に自分の名前を書くというズルをする。

 

結果、九郎助は一票を獲得したものの、有力な子分たちの得票には勝てず、不正を働いた後悔だけを抱えて、忠次の元を去ることになる。

 

史実では、国定忠治は地元に帰還したあと中風を患い、捕まって刑死するという。享年41。九郎助がどうなったのかは、わからない。

 

(_ _).。o○

 

「入れ札」は1921年に発表された作品だという。

今読んでも印象的な内容だけど、ルビがないと読めない漢字表記が多い。

 

まず「乾児」。乾いた児で、なぜ「こぶん」と読めるのか。

 

「斫り開く」の「斫」は、ここでは「き」とルビがつけられているけれども、「斫り」で「はつり」とも読み、金属やコンクリートを削り取ることを言う場合もあるのだとか。まったく知らなかった。