湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

悲しい靴たち・・・

 

 

数日前のこと。

大学から帰った末っ子が、妙にしょっぱい顔をして、「今日の出来事」を話し始めた。

 

帰りの電車で、やたらと美しい女性が隣に座り、周囲の乗客の視線を吸い寄せていたのだけど、その人の足元から、雨の日の下駄箱を数倍ひどくしたような、とんでもない臭気が漂ってくるので、ろくに呼吸もできなかったのだという。

 

「その人の隣に、くたびれ切ったリーマンが座ってたから、臭いはそっからだと思おうとしたんだけど、どう考えても隣の足元から漂ってくるんだよ・・・」

 

そうこうするうちに、その美女は末っ子よりも先に電車を降りて行き、臭いも消え去ったのだという。

 

「それならやっぱり、その美女の靴が臭ってたんじゃないの? 」

「いや、一つ隣のリーマンも一緒に下車したから、結局疑いは晴れなかった」

 

晩御飯前に、息もできないほどの美女、の靴の悪臭に出会うとは、運の悪いことだと思っていると、話を聞いていた亭主が、奇妙に生暖かい表情で、語り始めた。

 

「靴といえば、こないだ駅からうちに帰る途中、わしより背の高い美人を見かけてな、それが全身ガチガチにゴスロリコーデなんやけど、歩き方が妙でな、一歩ごとに、がっくんがっくん傾くんや。なんやろと思ってよく見たら、片手にとんでもなく厚底の靴を抱えててな・・・」

「あー」

「取れたんだな、底が」

 

末っ子によると、ゴスロリコーデでよく知られる長厚底の靴は、うっかり安物を買うと、あっけなくそういう末路を迎えるのだという。

 

「排水溝の網目にピンヒールが突き刺さってるのは、よくみるけどな」

「厚底も頑丈ではないんだねえ・・・」

 

道端に厚底だけが落ちている光景を思いうかべて、なんとも侘しい気分でいると、末っ子がさらに追い打ちをかけるような話を付け加えた。

 

「こないだ大学のキャンパスを歩いてたら、ロリータなコーデの学生が、異様な大股で、ずいっ、ずいって歩いてるのを見て、なんだろうと思って足元見たら、ブーツの先から足の指が見えてた」

「ブーツって、つま先から破れるもんなの?」

「知らん。安物だったんだろう」

 

 

靴のメンテは大切だと、つくづく思った。