(上の画像は、AIのcopilotさんに描いてもらった、「夕暮れ時の月の光がさす松林」)
題しらず よみびとしらず
夕づく夜さすや岡べの松の葉のいつともわかぬ恋もするかな
(ゆうづくよ さすやおかべの まつのはの いつともわかぬ こいもするかな)
古今和歌集 恋一 490
ゆふづくよ【夕づく夜】…夕方に空に出ている月。または、月が出ている夕暮れ時。
ゆふづく【夕づく】…動詞。夕方になる。日暮に近づく。
をかべ【岡辺】……岡のあたり。
わく【分く】……動詞。区別する。
【普通の意訳】
夕月の光がさしている、あの岡のあたりの、色の変わることのない松の葉のように、いつもいつも、同じような恋をしています。
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作者が「よみびとしらず」で、詞書もないので、どういう状況で詠まれた歌なのか、全く分からない。
ただ、「松」に「待つ」の意味が掛けてあるのだとすれば、この人は、夕暮れ時になるたびに、恋しい相手が来てくれることを、待ち続けていることになる。
夕暮れ時の月の光と松の枝葉の取り合わせは、かなり渋い。そして寂しい。
あまりドラマチックな恋ではないのかもしれない。
【怪しい意訳】
あの方と結ばれてから、それなりの時間が過ぎました。
訪れは、そんなに多くはありません。
だからでしょうか。共に過ごす時間に慣れる前に、恋して待つことに慣れてしまった私がいます。
夕暮れ時に月が空に登るのを見れば、今日は来てくれるかもしれないと、変わらぬ気持ちで思えるのです。
いつも見ているあの岡の、色の変わることのない松の枝みたいに、私の恋の熱量は、いつまでも変わることがありません。
どれほど長く、あなたの訪れのない日が続いても。
訪れるのが、あなたではない、別の誰かに変わっても。