日曜日。
いつものように、亭主とスーパーに買い物に行った息子(26歳・重度自閉症)が、帰宅後、そわそわしながら、
「きゅうけいあっ!」
と叫び始めた。
台所を覗き込みながら言うので、きっとまた食べ物のことだろうと思うけれども、該当しそうなものが全く思い浮かばない。
息子に聞き返してみた。
「きゅうけいあって、何?」
「きゅう、けい、あっ!」
なぜか、区切りが入った。
ますます分からない。(´・ω・`)
亭主に買い物の内容を確認すると、四人分のお昼を簡単に済ますために、冷やし中華、担々麺、ねぎとろ巻、おにぎりセットを買ったという。
スーパーの売り場で息子が選んだのは、大好物の冷やし中華。
帰宅後すぐに食べたがるとすれば、冷やし中華以外には考えられない。
だけど…
ひやしちゅうか
きゅうけいあっ
どう考えても、似ても似つかない。
…と思ったのだけど、そうでもないかもしれないと思い直した。
「冷やし中華」から「冷やし」を取り払うと…
ちゅうか
chu-ka
きゅうけいあっ
kyu-keia
息子は、「ちゅ」と「きゅ」の発音の区別が甘いことがある。「ちゅ」を「きゅ」と聞き取っているか、発音時に「ちゅ」のつもりで「きゅ」と発音してしまっている可能性がある。
試しに、
「ちゅう?」
と聞いてみたら、
「ちゅう、けいあっ」
と言い直した。
となると、後半の「けいあっ」も、「ちゅうか」の「か」である可能性が出てくる。
会話のなかで、「冷やし中華」という単語を発語する場合、語頭の「冷やし」のほうを強く明瞭に発音して、後半の「中華」はわりといい加減に発音されているように思う。
特に語尾の「か」は、早口の会話の中では、ほとんど無声化する場合もある。
息子は、ほぼ無声化されて聞き取りにくくなっている「ちゅうか」の「か」を、分析しつつ復元した結果、「けいあっ」と発音したのかもしれない。
お待ちかねの冷やし中華を美味しそうに食べる息子に、「冷やし中華」という名称を、繰り返し教えておいた。
五年後くらいに、自発語になっているかもしれない。