歴史音痴には難解すぎる、平安末期の人間関係把握のために、NHK大河ドラマ「平清盛」を見始めたのだけど…
(Amazonプライム・ビデオ、NHKオンデマンド)
冒頭、源頼朝・政子夫妻が出てきて、頭がくらっとした。
この二人が結婚しているということは、清盛って最晩年、もしくはとっくに死んでる頃じゃなかろうか。
頼朝は、父義朝の菩提を弔う寺の柱立ての儀式に出向いていて、馬で駆けつけてきた政子から、壇ノ浦で平家が滅亡したという知らせを聞いたのだった。
うん、既に清盛死んでる。
戦勝の喜びに湧く家臣たちが、口々に亡き平家を罵るのを聞いた頼朝は、
「平清盛なくして、武士の世は来なかった!」
と一喝し、騒ぎを鎮めたものの、心の中で「おかしなことを口走ってしまった」と呟く。そしてそのまま頼朝が清盛のドラマのナレーターに…
「鎌倉殿」の頼朝(大泉洋)は、清盛を呪い殺さんばかりに恨んでいたけど、こちらの頼朝は、もう少し広い視野で時代の移り変わりを見ていたようだ。
だいぶ唐突だったけど、清盛という人物が、良くも悪くも世の中を大きく動かす力を持った存在だったということを印象づける、面白いオープニングではあった。
そういえば、「鎌倉殿」の北条義時は、後鳥羽上皇という、最も高貴な存在を流罪にして権力を奪い取った自分を大罪人と思っていたようだったけど、清盛だって後白河上皇を幽閉して権力を取り上げたりしていたのだから、似たようなものだと言える。
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その後、時代が遡って、清盛誕生の経緯が明かされる。
舞子という白拍子が、白河法皇の子を身籠ったものの、子を流すように法皇に命じられたために逃亡し、たまたま出会った平忠盛に匿われて、厩で出産する。
平忠盛は、検非違使・追捕使だった父の正盛とともに、盗賊の討伐をするなどして朝廷のために働いていたけれど、武士である彼らの血生臭い生業を、公家たちは憚ることもなく蔑みの目で見ていたようだ。
捕縛した罪人たちを引き連れた正盛、忠盛父子を見かけた関白の藤原忠実は、わざわざ車を止めて、血まみれの姿で道を歩くなと叱責する。命懸けで都の治安を彼らをねぎらう気持ちは全くないようだった。
平家が繁栄する以前の武家と公卿との関係は、そういうものだったのだろう。
いま読んでいる大原富枝「建礼門院右京太夫」では、和歌や箏に堪能な平家の貴公子たちが出てきて、公家の女性たちに憧れられているけれども、公家からの差別や蔑みを跳ね返して名実共に対等の位置まで成り上がっていくまでには、きっといろんなことがあったのだろう。
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話がそれるけど、関白忠実は、「鎌倉殿の13人」で頼朝に倒される大庭景親役だった國村隼が演じていたので、なんだかすぐに滅ぼされるような気がしてしまったのだけど、そんなことにはならないようだ。
ただ、忠実も白河法皇のせいで散々苦労するようで、清盛が生まれた2年後の1120年には、法皇の怒りを買って関白を罷免され、10年も謹慎することになるらしい(保安元年の政変)。
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忠盛と舞子は、共に暮らすうちに惹かれ合い、実の家族のように慈しみあうけれども、幸せな時は長くは続かなかった。
白河法皇に命じられて舞子を追っていた源為義(ナレーター頼朝の祖父)は、忠盛の傍らで今様を歌っていた女が舞子であることに気づき、捕まえて白河法皇に引き渡してしまう。
舞子を追って白河法皇の元に参った忠盛は、舞子を切り捨てろと法皇に命じられても従わず、彼女を自分の妻にしたいと申し出る。
白河法皇相手にそんな願いは通らないと悟った舞子は、忠盛と我が子の命を守るために、敢えて法皇に斬りかかろうとして、射殺されてしまう。
舞子の死によって、白河法皇の面子も立ったことから、忠盛は赤ん坊を引き取って育てることを許される。
赤ん坊は平太と名付けられ、忠盛の嫡男として大切に育てられる。
白河法皇の寵姫である祇園女御は、かつて舞子を可愛がっていた縁から、平太を我が子のように慈しむ。
舞子の死後、忠盛の正妻に迎えられた宗子は、自分の子供が生まれても、清盛を嫡男として立て、一応は我が子と分け隔てなく育てている。
宗子の父親は藤原宗兼という人で、千載和歌集に歌が一首掲載されている歌人だという。武家ではないのだろうけど、Wikipediaによると、藤原宗兼は、北条時政の後妻の牧の方の兄である牧宗親の父親という説があるのだとか。もしそうだとするなら、牧の方と宗子は姉妹だった可能性がある。
宗子は、平治の乱で源氏が没落したときに、頼朝の助命を願ったのだという。平家棟梁の妻だった人に命を助けられた頼朝が平家を滅ぼすのだから、皮肉な話だ。
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清盛がすくすくと育っている一方で、その父親の白河法皇は、鳥羽天皇(白河法皇の孫)の中宮であり、自分の養女でもある藤原璋子と不倫して、子どもまで産ませてしまう。
白河法皇は鳥羽天皇に譲位を迫り、璋子が産んだ自分の子どもを、たった5歳で即位させる。それが崇徳天皇だという。
白河法皇の強引なやり方は、鳥羽天皇の心を深く傷つけ、凄まじい遺恨を残すことになる。
そもそも、白河法皇が舞子と自分の子を殺そうとした理由は、舞子の子どもが璋子に仇をなす不吉な存在だと陰陽師が言ったからだという。
無茶苦茶な話ではある。
ドラマがどこまで歴史の真実に迫っているのかは分からないけれども、白河法皇が亡くなると、鳥羽上皇は藤原得子(美福門院)を寵愛し、璋子が産んだ崇徳天皇を譲位させて、得子の産んだ親王を即位させる。
ところが、そうやって即位した近衛天皇は、たった17歳で崩御。その後、朝廷勢力は崇徳上皇側と後白河天皇側に分裂し、保元の乱がひきおこされるすることになる……
なんか、これって全部、白河法皇が悪いんじゃなかろうか。
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ドラマのラスト近くで、平太(清盛は)、自分が白河法皇の落胤であることを知ってしまう。
父忠盛が成敗した盗賊朧月の遺児に、自分は父が法皇に取り入るために貰われたのだと言われた平太は、祇園女御の元に駆け込んで真実を尋ねようとするものの、たまたま来ていた白河法皇に侮辱され、警護の武士たちに摘み出されてしまう。
その後、自分を探しに来た忠盛を問い詰めると、忠盛は、平太が白河法皇の落胤であると同時に平氏であると言い、犬のように殺されたくなければ強くなれと一喝する。
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大河ドラマを見たからには、歴メシネタを探さなければ気が済まない。
厩で出産した舞子に、平忠盛がお椀に入った汁物その他を差し入れしていた。
汁物の内容物はわからなかったけど、勢いよく飲んでいた舞子の口元から少しだけこぼれていたのを見た感じでは、かなり汁気の多い粥のように思われた。
お椀の横にもう一つ、白っぽいものも見えたけど、そちらの正体は見当もつかなかった。
盗賊朧月の息子が、盗んだ白瓜を平太にあげようとする場面もあった。
白瓜というと漬物にするものだと思っていたけど、生で食べることもできるらしい。知らなかった。朧月の息子も、きっと生のまま齧ったのだろう。
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【キャストの一部】
宗子(和久井映見)……忠盛の正妻
璋子(待賢門院)(檀 れい)……白河法皇の養女で不倫相手
祇園女御(松田聖子)……白河法皇の寵姫
藤原忠実(國村隼)……武家と血生臭いものが大嫌いな関白
源為義(小日向文世)……頼朝の祖父だけど、頼朝はこの祖父をあまり評価していない様子
北条政子(杏)……毛皮の腰巻きがキュートな御台所