ネタバレしまくりなので、未読の方はご注意ください。
日曜日に買った「ロボット・イン・ザ・ガーデン」(デボラ・インストール著)の続きを読んでいる。もうすぐ200ページだ。
主人公は自宅の庭にやってきた旧式ロボットのタングを連れて、東京にやってきた。
物語の序盤から、文章にちらちらと日本のイメージが瞬間的に挟み込まれることがあって、まるで作者がサブリミナル効果を狙ったみたいだと思っていたけど、本当にそうだとして、日本人読者には効果があるのだろうかと考え込んだ。
少なくとも私には効果があった。
あまり私の好みではないエピソードの続くところで、何気なく「日本探し」をしていたおかげで、途中で放り出さずに読み続けることができたから。
ロボットは我が家の窓に背を向け、足をまっすぐ前に投げ出して、柳の木の下に座っていた。
体の表面には秋の露が落ち、さながら、くず鉄置き場の廃品と、ある種の日本画の融合といった風情だ。(11頁)
いいな。
実のところ、主人公の性格が好きになれないので、彼の性格のせいで引き起こされるトラブルに、どうしてもイラッとくる。
親の遺した財産と家のおかげで何不自由なく暮らしながら、三十過ぎてもモラトリアム人間であることに頑固にしがみついていて、妻の葛藤や辛さに気づこうともしないダメ男。
妻は弁護士として働きながら、家事も全部引き受けている。子どもが欲しいと願っていたけど、夫婦の話し合いは全く進まず、気持ちがどんどんすれ違ううちに、いつどんな時も何もしようとしない夫に疲れ果て、離婚を決意。40ページほどで家を出て行く。
では妻の方に感情移入できるかというと、そうでもなかった。庭に迷い込んできたロボットのタングを、妻はただただ邪魔な異物として夫に処理を押し付けようとして、言うことを聞いてくれない夫を詰り、終いには役立たずの夫ともども処分したそうな勢いだった。夫である主人公が妻に対して鈍感で傲慢だったのと同じくらい、妻の方も夫に対して鈍感で残酷だった。
そんなふうに愛情が蒸発枯渇してしまった家族の話はとても苦手なので、文章の中にサブリミナルな日本がチラチラと見えていなければ、50ページくらいで読むのを挫折したかもしれない。
妻が家を出ていったあと、主人公はタングを連れて飛行機でカリフォルニアへ行き、放射能汚染で住人全員が避難を余儀なくされて、人懐こい犬が一匹いるだけになった街に迷い込む。
この作品は2015年にイギリスで刊行されたそうだから、作者は日本の原発事故を知った上で書いた可能性がある。人のいない双葉町の光景などを報道番組で見ていたかもしれない。
主人公の道中は、もともと本人が持っている生活能力のなさに加えて、旧式ロボットのタングが引き起こす騒ぎのせいで、惨憺たるものだった。
カリフォルニアで宿泊した「ホテル・カリフォルニア」(このホテル名にはちょっと笑った)は、人間とアンドロイドのための売春宿だったため、そうとは知らずにタングと一緒に泊まった主人公は、旧式ロボットに欲情する変態だと思われ、ホテルの客や従業員たちに白い目で見られまくる。
その次に泊まったモーテルでは、夜、タングに黙って一人で飲みに行ったところ、寂しくなったタングが部屋で騒ぎを起こしたために、ロボット虐待を疑われて警察沙汰になってしまう。
何とか無事に日本についた二人だけど、たぶんまだいろんなことがあるのだろう。
(_ _).。o○
この作品、シリーズ化して何作も出ているようだ。
表紙の絵を見ると、タングが赤ん坊の手を引いたり、幼児と一緒にいたり、学校や病院にいたりするようだ。
あのダメダメな主人公が父親になるのかと思うと、だいぶ不安だ。妻とよりを戻すのかどうかも気になる。
とにかく続きを読もう。