お気に入り本棚の六冊目。
ここのところずっとバッグに入れてあって、病院の待ち時間に読んだりしている本。
辻本雅史「江戸の学びと思想家たち」岩波新書
中世は、武士が村に住み生産にも関わる兵農未分の社会だった。それゆえ領主は生産民に対して直接的な人身支配が可能であった。
(中略)
村役人は有力村民が務め、年貢の納入も村で責任を負う「村請制)であった。戸別の年貢割付は、検地帳をもとに石盛(反当り平均収穫高)に面積を掛けた米の収穫高によって計算されるのだが、それは村役人のいちばん大事な仕事であった。
だから村役人は、高度な書記と計算の能力がなければ務まらない。
「江戸の学びと思想家たち」江戸時代の文字使用より引用(p19)
日本人の識字率が高くなった理由の一端が、兵農分離というのは、言われてみればそうだろうなと思うけれども、あまり考えたことがなかった。
この話のあと、江戸時代に入ってから、出版業界が一気に発展した話が続く。万葉集や源氏物語などの文学書や、算術などを教える本など、幅広いジャンルの書物が数多く印刷、出版され、広く読まれるようになったのだ、と。
本が売れなくなったとか、いまの若い人(どの世代までをいうのかよく分からない)があまり本を読まないとかいう話を聞くけれど、電子本を含めて本はものすごい勢いで出版され続けているように思えるし、書店の新刊コーナーも賑やかだ。Kindleのカタログを見ていると、全盛期の出版物もずいぶん復刻されているように思う。
私には、近世から今に至るまで、日本は変わらず本がたくさん作られる国のように思えるけれども、違うのだろうか。よく分からない。