湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

今日の一冊「江戸の食空間」大久保洋子

お気に入り本棚の本を順番に書いていく日記の二回目なのだけど、今回の本は、今朝亭主が、「お前これ読むか?」と言って渡してきたばかりなので、まだ本棚に入れていない。

 

大久保洋子「江戸の食空間 屋台から日本料理毛へ」講談社学術文庫

 

 

10年ほど前に研究費で買って、読まずに放っていたらしい。

 

さっそく有り難く読み始めた。

実に私好みで楽しい本だ。

 

「江戸の名所図会」や「守貞謾稿」など、名前だけは知っているけど見たことのない近世の資料の内容や図がふんだんに紹介されていて、江戸のファストフードがどんなふうに庶民に提供されていたのか、わかりやすく解説されている。

 

江戸の屋台で大人気だった「天麩羅(てんぷら)」の由来が、よく知られているようなポルトガル語オランダ語ではなく、魚の揚げ物を売り出そうとしていた知人に頼まれた戯作者の山東京伝が、その場のノリで命名したのだと弟の京山が書いているという話も、なんだか説得力があって、興味深かった。

 

寿司といえば、古来、ご飯と魚を長期間漬け込む「なれずし」が一般的だったけど、室町時代になると、漬け込む期間を短縮した「生なれずし」が作られるようになり、江戸時代になるとさらに時短を推し進めて、ご飯に酢と塩を混ぜ込んでしまう「はやずし」「当座ずし」が生まれ、1820年ごろには握って即食べる「にぎりずし」が登場したのだとか。

 

そんな各種の「すし」の解説のなかに、「中国の鮒なれずしの、なんと三五年漬けたもの」を試食した話がでてきた。食べたのは、東京農業大学名誉教授の小泉武夫という先生だそうで、「塩びきの鮭の味がする」と語っていたとのこと。

 

三五年ものの鮒すしがこの世に存在することも驚きだけど、それを試食してみる勇気には平伏するしかない。漫画「もやしもん」の世界のようだ。

 

うちの愛用の糠床に沈んでいるきゅうりだったとしても、年をまたいだ時点で、食べるのには相当に躊躇する。我が家の乳酸菌を信じていないわけじゃないけど、ミクロの世界には計り知れない宇宙が広がっているはずで、その宇宙の力に自分のヤワな胃腸やすぐ暴走する免疫系が耐えられるという自信が持てない。うん、無理だ。

 

などと、あれこれ思い巡らしつつ、時間をかけて読もうと思う。