病院の待合室で少しだけ読んだ本。
どう考えても、口からとる栄養より消費する体力の方が大きい気がして、ある日、ついに担当医師に言った。
「これでは病気が治らないんじゃないでしょうか。点滴に戻していただけませんか」
若い医師は穏やかに、ハッキリと答えた。
「一本の点滴より一口のスプーンですよ」
強烈な一言だった。」
『牧子、還暦過ぎてチューボーに入る【電子特別版】』内館 牧子著
いまKindle Unlimited(読み放題)で読むことができる。
一本の点滴より、一口のスプーン。
私も体験上、これが事実だと知っている。
三十代のころ、無顆粒球症(白血球が激減する病気)で入院し、数日間食事が取れず、点滴だけで生きていたことがあった。全く飲食しないのに、お腹が空かず、水も欲しいと思わなかった。でも力も出なかった。
一昨年、新型コロナで入院したときには普通食だったけど、味覚がおかしくなっていたせいで食べるのに難儀した。でも食べないと負けると思ったから、根性で残さず食べた。
退院後は何ヶ月も後遺症に悩まされたけど、なんとか回復できたのは、十分な休養と、亭主が丁寧に用意してくれた食事のおかげだと思っている。