湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

書評家と読書紹介者

数日ぶりにTwitterを開いたら、読書界隈が何だか荒れていて、いつもは超平和でほのぼのしている読書垢のタイムラインに、怒りの土石流が起きていた。

 

何事かと情報を探してみたら、プロの書評家さんが、TikTokで書籍紹介をしている人に噛みついて、噛みつかれた人が活動を中止するという事態に至り、炎上しているらしい。

 

Yahooニュースにも記事が出ていた。

 

書評家が本紹介TikTokerけんごをくさし、けんごが活動休止を決めた件は出版業界にとって大損害

書評家が本紹介TikTokerけんごをくさし、けんごが活動休止を決めた件は出版業界にとって大損害(飯田一史) - 個人 - Yahoo!ニュース

 

 

読書紹介のTikTokをやっているのは、けんごさんと言う方で、噛みついたプロの書評家は、豊崎由美さんという方だそうだ。

 

私は書評家の書評をほとんど読まないし、読書紹介の動画も見ない。

 

だからどちらも存じ上げないけれども、Twitterでながれてきた、けんごさんのつぶやきには、素直に共感した。

 

けんご📚小説紹介 on Twitter: "書けません。僕はただの読書好きです。 書けないですが、多くの方にこの素敵な一冊を知ってもらいたいという気持ちは誰にも負けないくらい強いです。 読書をしたことない方が僕の紹介を観て「この作品、最高でした」「小説って面白いですね」と言ってくれることがどれだけ幸せなことか知ってますか?… https://t.co/ogFCEiPO6r"

 

 

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紹介した本を「私もそれ好き!」「読んだよ!」と言ってもらえることは、私などでは滅多にないけれども、本当にうれしいものだ。

 

逆に、自分の好きな作品を、見ず知らずの方がよい文章で読書レビューを見つけると、その方がレビューを書いている他の作品も読みたくなる。そうして、新しい作品に出会う機会が増えていくのは、読書に付随する大きな楽しみの一つでもある。

 

そうやって、私に新たな読書の機会を与えてくれるのは、ほとんどの場合、プロの書評家ではない。

 

そういう出会いによって最近買った本の一部を貼り付けてみる。

 

「嗅ぐ文学、動く言葉、感じる読書  自閉症者と小説を読む」(ラルフ・ジェームズ・サヴァリーズ みすず書房

 

清少納言を求めて、フィンランドから京都へ」(ミア・カンキマキ著 草思社

 

「元禄御畳奉行の日記  尾張藩士の見た浮世」(神坂次郎著 中公文庫)

 

この3冊は、Twitterのつぶやきで見かけて知ったのだったと思う。ツイートしていた方々は、プロの書評家や文筆家とプロフィールに書いているような方々ではない。

 

そんな風に出会って買った本は、他にもたくさんある。

 

 

豊崎由美さんという書評家は、「TikTokみたいなもん」で「杜撰」に紹介された本が売れるのは「一時の嵐」にすぎず、そんなものに「翻弄されるのは馬鹿馬鹿しくないですか?」と、問題を提起している。

 

その上で、「あの人、書評書けるんですか?」と書くことで、ご自身の価値観を明確に示している。

 

 

TikTokでの読書紹介」で、出版業界が売り上げを伸ばしたとしても、それは「馬鹿馬鹿しい」ことであり、真っ当な書評家の仕事のほうが価値が高い、ということをおっしゃりたいのだろう。

 

つまるところ、豊島由美という方は、TikTokの読書紹介に、書評家としてのご自身の立場を侵食されていると感じ、自信の存在意義を揺るがしかねない深刻な脅威に立ち向かうために、敵対する特定個人に対して、真正面からマウントを取るという形で、宣戦布告したのだろう。

 

 

プロが素人相手に喧嘩を売るのに注意が必要であるのは、格闘家に限ったことではない。

 

プロの文筆家には、そうではない書き手とは比べものにならないほどの力がある。プロとして積んできた業績と知名度、それらを踏まえて公開の場で発言した場合の影響力は、大炎上を引き起こすに足る燃料となりかねない。

 

まして、その道の素人相手に、プロが自家の看板で殴りかかったとなれば、どうしたってプロ側への目は厳しくなるだろう。

 

 

さらに悪いことに、その素人の方は、「読書好き」が高じて熱心に書籍紹介を善意で続けているうちに、業界への影響力が増してしまったというのだから、

 

鳴かず飛ばずのプロが素人に嫉妬して潰しにかかった」

 

と見る人だっているだろう。

 

宣戦布告の文も、よろしくなかった。

 

あの書き方では、TikTokで紹介されて売り上げを伸ばした本や、その読者たちまで、豊崎由美さんのマウントの下敷きになってしまう。

 

どうにもこうにも、まずい喧嘩の売り方をしたとしか言えない。

 

これでは勝てない。

そもそも勝ちに行く相手を間違えている。土俵も違う。

 

 

私のタイムラインには、豊崎由美さんを陰に陽に批判するツイートが多く流れてきていて、その中には、知名度の高いプロの作家さんたちの発言もあった。

 

この一連の流れを見ていて、失礼ながら、まるでラノベの悪役令嬢のようだと思った。

 

自らの出自や教養を高飛車にひけらかし、けなげに生きる平民出身のヒロインを貶め続けた結果、王子に見限られて婚約破棄と追放のコンボを食らって民草に「ざまぁ」と言われるのが、悪役令嬢の定番の顛末だけれど、豊崎由美さんのご発言とその後の炎上のありようを見ていると、もろに重なってしまっている気がするのは、気のせいだろうと思いたい。

 

しかし、一度そう思ってしまうと、悪役令嬢もののラノベの熱心な愛好者としては、豊崎由美さんという書評家個人に、どうしても好奇心がうずいてしまう。

 

一体どんな方なのだろうと思って、豊崎由美さんのWikipediaの記事を読んでみたら、1961年生まれ、私より1歳年上の方だった。

 

もっとずっとお若い方だと思っていたら、まさかの年上。同世代と言ってもいい。

 

Twitterでは「老害」などという言葉で批判されていたのを見かけた。私の世代は既に老害層だったのかと思うと、なんとも物悲しい気持ちになる。

 

老害」よりは「悪役令嬢」のほうが、だいぶ聞こえがよくないだろうか。ダメかしら。

 

人物に関する記述には、こんなことが書かれていた。

 

父は特攻隊の生き残りで、石原慎太郎の『スパルタ教育』に影響を受けてスパルタ教育を施されたため、石原に恨みがあると言っている。

 

「皆さんは「家族」について考えたことはありますか。私は小学校六年生の時に、九歳年上の姉が自殺し、その翌年には母親を病気で亡くしたせいで、若い頃は「自分には家族がない」というコンプレックスから、無闇と家族制度を否定する中二病的態度を取ったものでした。(今となっては恥ずかしい黒歴史)。」

 

と回顧している。

 

Wikipediaの「豊崎由美」のページより引用)

 

 

石原慎太郎は、私の中の、

 

「まだ一冊も読んでない小説家のイメージランキング」

 

で、万年ワーストワンの作家だ。

 

(ちなみに、「一冊だけ読んだ小説家のイメージランキング」のワーストワンは、曾野綾子だったりするけど、それはどうでもいい。)

 

そうか、豊崎由美さんは、実質的に石原慎太郎の被害者でいらしたのか。

 

正確には、石原慎太郎的世界観によって抑圧された生い立ちの人というべきか。

 

お気の毒に……

 

ご著書に「石原慎太郎を読んでみた ノーカット版」があるという。

 

いつか、読んでみよう。