昨夜寝る前に、図書館から借りて来た半村良の「裏太平記」という小説を、末っ子に音読してもらった。
冒頭の章は、16歳の吉田兼好が、集めてきた反故紙で黙々と書の稽古をしている場面から始まる。
その落ち着いた書道練習のシーンが終わる前に、何度も爆笑させられた。
末っ子「"いつしか繊維も溶けほつれ、あちこち尻だらけになってしまっている"」
私「ちょっと待て! 紙が尻だらけって何!?」
見せてもらうと、尻ではなく、孔という字だった。
私「それ『あな』だから! 『しり』じゃないから!」
末「似てるから間違えた」
孔と尻の一体どこが似ているというのか。
お尻を拭いた使用済みのトイレットペーパーだって「尻だらけ」になることはない。
確かに尻には肛門という孔があるけれど、その関連性だけで誤読するのは難しい。
末っ子「"だがそれはそれでまた……ぼんばりあや壁の下張りに使うと、白い紙よりおもむきがあってよいものだ"」
私「…アントニオ猪木?」
末「ボンバイエではない。ぼんばりあ…みたいな感じの漢字だ」
私「見せて」
几帳だった。
私「ボンじゃない、キだ! 点がないでしょーが! あとバリアはどっから来た!?」
末「なんとなく?」
私「几帳というのは、コレだ!」
(イラスト屋さんからお借りしました)
末「あー、それか」
私「部屋の間仕切りだから、まあ、バリアと言えなくもないけど、『帳』っていう字にバリアなんていう読みはたぶんない」
「裏太平記」の原文は次の通り。
兼好が持っている反故などは、濡らしては乾かし、濡らしては乾かしして、いつしか繊維も溶けほつれ、あちこち孔だらけになってしまっている。
だがそれはそれでまた、几帳や壁の下張りに使うと、白い紙よりおもむきがあってよいものだ。
当然ながら、尻だらけの紙もアントニオ猪木の闘魂も出てこない。
この作品は「歴史破壊小説」だそうだけど、末っ子はそれを「小説破壊音読」で蹂躙している。
読み終わるまで、アントニオ猪木のテーマ曲が頭から離れなくなりそうだ。
(´・ω・`)