湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

息子のパニックと会話

 

自閉症スペクトラムで重度の知的障害のある息子(23歳)は、休日にパニックを起こすことが多い。

 

いつからそうなったのか、はっきりしないけど、特別支援学校の高等部を卒業して介護施設に通所するようになってから、次第にその頻度が上がっていったように思う。

 

学校生活と違って、介護施設での生活には行事が少なく、長期休暇もない。

 

つまり、一年を通してあまりメリハリなく過ごすことになるわけで、変化への適応が苦手な自閉症者にとっては好ましい環境のはずなのだけど、どうもそういう平坦な暮らしに慣れれば慣れるほど、自宅でパニックを起こしやすくなったように思う。

 

変化の少ない生活のなかで、平日と休日という、こくありきたりな変化にも、ストレスを感じるようになってしまったのかもしれない。

 

あるいは、自宅での退屈な時間そのものが、ストレスなのかもしれない。

 

日曜日の今日、息子はお約束のようにパニックを起こした。

 

今回の引き金は、午後2時半ごろ、末っ子が一人で買い物に出かけたことだった。

 

末っ子が出かけて20分ほどたったころから、息子は7つ年下の妹である末っ子の名前を連呼しながら、何度も何度も玄関を開けて外を確認し始めた。

 

息子の場合、何かを大声で連呼することはパニックの徴候なので、まずいなと思って、気をそらすために声をかけていたけれど、どうしても我慢できなくなったようで、裸足で外に飛び出してしまった。

 

玄関から出てしまってもマンションの通路だから、即座に迷子や交通事故の危険があるわけではない。

 

けれども、Tシャツにトランクスいっちょの巨大な男が大声で何かを連呼しているのだから、息子を知らない人が通りかかったら、何と思われるか分からない。というか、普通に怖がられるだろうと思う。本来とても気の優しい息子が他人に恐怖を与えるような存在になってしまうのは、親としてあまりにも悲しい。

 

とはいうものの、親の力づくではもはや息子に勝てない。玄関に駆けよろうとする息子を全力で引っ張ったところで、私が引きずられるだけで(私だってそんなに軽量ではない)、全く抑止にならないし、暴走する息子の前にうかつに立ちはだかろうものなら、勢いよく吹っ飛ばされて怪我をしかねない。

 

 

いつもなら、GABAのサプリメントとバッハのマタイ受難曲で対応するのだけど、あまりマタイ受難曲に頼ると、

 

マタイ受難曲=パニック受難曲」

 

という関連付けが強くなって、そのうち聞くだけで不快な曲ということになってしまいそうな気がしたので、今日は敢えてバッハには頼らず(GABAは飲ませた)、「会話」などでしのぐことにしたのだけど……

 

 

大変だった。(;_;)

 

 

毎度のことながら、つくづく思う。

自己コントロールを見失ってパニックで状態にある人と、意思の疎通を図ろうとするのは、とてつもない重労働なのだと。

 

 

あと、やっぱりバッハの音楽は偉大だ。

 

 

とはいうものの、パニックの最中であっても、息子はかろうじて私の言葉を聞いてくれた。

 

息子「ざわざわざわーーー」(パニックになった息子の決まり文句)

私「パニックになると、頭がざわざわする?」

息「パニックになると、ざわざわする!」

私「パニックは?」

息「パニックは、嫌いです!!!」

 

私の言葉の復唱ではなく、自発的に「嫌いです!」と強烈に断言していた。

 

私「パニックになると、苦しいよね」

息「パニックになるとくるしいよね!!」

私「深呼吸しよう。息吸ってー」

息子「いきすってひゅーーー」

私「吐いてー」

息「はいてしゅーーー」

 

末っ子の名前を絶叫しながらだけど、私が声をかけると、両腕を上げたり下げたりするアクションをつけながら、深呼吸をしてくれた。たぶん、学校か介護施設でも、やったことがあるのだと思う。

 

深呼吸を誘導しても、三回ほどしか続かないので、すぐに別の提案が必要になる。

 

歌を歌ってみた。

 

アニメ「忍たま乱太郎」のテーマソングの頭出しをして、息子に続けて歌ってもらった。

 

私「かーりかりしてー」

息「めーそめそしてー」

私「どーーしたんだいー」

息「たいよーみたいにーわらうー」

私「きみーはーどこだいー」

息「うぉーうぉー」

 

 

息子は歌を一人で歌うことができない。

誰かと声を合わせて歌うこともできない。

 

たぶん好きな曲の歌詞は全部覚えていると思うのだけど、上のように交互に歌う形でないと、途中で声が止まってしまうのだ。

 

それでも歌うことは嫌いではないらしくて、たとえパニックの最中であっても、私が歌いかけると真面目に続けてくれる。そして、ちょっとだけ気分が落ち着く。

 

逆に私は歌うことが苦手だ。

自分の音痴な声を聞くのはストレスだし、息子の絶叫連呼に負けないように声を張り上げたりすれば、息が切れてヘトヘトになる。

 

脳貧血を起こしそうになりながら、忍たま乱太郎を二回ばかり歌い上げたところで、絶叫連呼が少し落ち着いたので、深呼吸を挟みながら、また「会話」を試みた。

 

私「本でも読もうか」

息「……(無反応)」

私「好きな本、取って」

 

本棚だらけの部屋で、床にも本が山積みなのに、息子は本を手に取らず、別の物を黙って手渡してくる。

 

私「これ、本じゃなくて、ファイルだよ。そこにある本、取って」

 

すると息子は、床に積んであったルーズリーフにサインペンで「ほん」と書いて、渡してよこした。

 

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私「本、読みたくないの?」

息「……」

 

沈黙。

 

ためしに、手近にあった子供向けの歴史の本を読み上げてみたけど、一行読み終わる前に、

 

「おしまい!おしまい!おしまい!」

 

だった。

 

歌は可。

ほとんど復唱の「会話」もなんとか許容。

でも読み聞かせは拒否。

 

そういうことらしい。

 

その後、また歌ったり、深呼吸したり、私の口三味線でラジオ体操第一をやったりした(体操したのは私だけで息子はところどころメロディを口ずさんで見ていた)。

 

末っ子が帰宅たあとも、息子はしばらく「ざわざわ」していたものの、夕食までには落ち着いた。

 

 

パニックの始まりから収束まで、だいたい二時間ほどだったろうか。

 

夕食後の今は、iPadでマイクラをやりながら、ときおり忍たま乱太郎のテーマ曲をハミングしたりして、ゆったりくつろいでいる。

 

私は心底ぐったりしつつ(歌とラジオ体操が過酷だった…)、今日の反省と記録のために、このブログを書いている。

 

 

次は出来れば一時間以内に収めたい。 

気持ちを落ち着けるために繰り出すネタを、もっといろいろ考えておこう。

 

それと、過ごし方を工夫することで、日曜日のパニックリスクをもう少し下げたいところだけど、今のところアイデアがない。