「新型コロナのワクチンを打ったら、重い後遺症が改善したという事例についての論文が出ているらしいんですよ」
きのう、月一回の精神科外来で近況報告が済んだ後、お医者さんが私にそう教えてくれた。
即座に眉毛につばをつけたくなったけど、学術論文になっているというのであれば、それなりの数の改善例があるのかもしれない。
ただ、お医者さんも直接その論文を読んだわけではなく、人づてに聞いただけとのことだった。
「うーん、興味はありますけど、なんでワクチンで後遺症な良くなるのか、さっぱりわからないですね」
「まあ、実際良くなる理由はわからないらしいしわ噂程度のことと思っておいていいと思いますよ」
「ですよねえ……ほんとに良くなるなら、試したみたい気もしますけど。どのみちワクチンに効果があるかどうかなんて、予防になるかどうかも含めて、バクチみたいなもんでしょうし」
「そうですねえ」
いやそこ、お医者さんとして同意していいの?と思ったけど、きっと本心だったのだろう。
なんてことがあった翌日の今日、自治体から新型コロナワクチン接種の申し込み案内が届いた。
「わし、受けようかと思う」と亭主。
亭主も私と一緒に昨年11月に感染済みだけど、抗体がいつまであるのか分からない。大学も対面式の講義が再開しているし、受けるべきだとは思う。
私も受けようかと思い始めている。
昨日聞いた「ワクチンで後遺症が改善する」という話に心を動かされたというより、あんな苦しい病気に二度とかかりたくないという思いがふつふつと沸いてきたというか。
今度かかったら、さすがに助からないような気がするのだ。
近頃、ふっと気が抜けた瞬間などに、脳内で人生の走馬灯が高速自動回転することが増えてきた。身体が弱ったせいで無意識のうちに感傷的になっているだけだろうけど、なんかへんなフラグが立っている気がしなくもないし、あまりいい感じもしない。なんのフラグか分からないけど、早期回収するつもりはない。やり残しと心残りが多すぎる。