寝込んでいる間に読んだ本を、ほとんどメモしていなかった。
入院中にハリーポッターシリーズのラスト2巻を読んだことは書いたけど、それ以外の(主にラノベや漫画)作品については、療養以外の記事で字数が増えすぎるのもどうかと思って、書くのを控えていた。
すでに読んだ作品名が記憶から抜け落ちつつあるけど、kindle本や「小説家になろう」アプリは既読履歴が残るから、なんとかなる。
コロナで苦しいときに心の支えになってくれた作品を、ちゃんと記録しておこう。
「魔道具師ダリアはうつむかない」(甘岸久弥 著)
「小説家になろう」で連載中の小説。
入院中、この作品の更新があると、具合の悪さがしばらく吹き飛ぶほど嬉しかった。
コミック版の1巻目が、たしかkindleの読み放題になっていて、それも楽しく読んだ。
味の濃いキャラが多いので、コミックになっても十分に面白い作品だけど、原作の文章によって紡ぎ出される絶妙な間とか、じんわりと滲み出るユーモアが好きだなと、改めて思った。
主人公のダリアとヴォルフの、恋愛になりそうでならない、もどかしくもひたむきな距離感を、二人を取り囲む仲間たちと読者が一緒に、生暖かい目で見守る感じがすごくいい。
日本人女性だった前世の記憶を持つダリアによって生み出される、家電を発想の土台とした魔道具や、その素材となる魔物たち、魔物を狩ったり養殖したりする人々、商品化するために関わってくる様々な職種のギルドの人々、ダリアの商会を支える従業たち、そして友人たち。
異世界転生のアドバンテージを生かすお話というと、どうしてもそのチート能力がストーリーを牽引していく流れになるけれど、ダリアは魔道具師として抜きん出た才能に恵まれていたわけではない。破天荒な魔道具師だった亡き父にあこがれ、また、様々な苦境にある人々の力になる魔道具を生み出すことを願って、ひたすら努力を重ねる人である。
前世ではブラック企業に酷使され、うつむいたまま過労死したというダリアが、しっかりと顔を上げて、多くの人々に支えられながら、時折味わい深い大ボケをかましたり、研究一筋の魔道具バカの真髄を発揮して、想像を絶する大騒動を引き起こしたり、「親友」のヴォルフと一緒に魔物料理を味わったりするエピソードは、病身の免疫力を整えるのに、とても大きな効果があった。
まだまだ続いてほしい。
それにしても、物語の舞台となっているのは王国で、支配層である貴族たちがたくさん登場するのに、国王および王族が全く登場しないのはなぜだろう。
ダリア自身が平民だったからかもしれないけれど、魔道具発明の功績で男爵になるのが決まったし、普段から仕事で王宮によく通って、高位貴族たちとも交流が深いのに。
もっとお話が進んでくると、出てくるのかな。
それも、だいぶ厄介な存在として。
いろいろ楽しみである。
「エノク第二部隊の遠征ごはん」(江本マシメサ 著)
こちらも「小説家になろう」に掲載されている作品。本編は既に完結していて、書籍化、コミカライズもされている。
主人公のメルは、エルフなのに魔力がないとされ、故郷の村の人々に蔑まれ、憐れまれる存在だった。
生まれた家は貧しく、たくさんいる兄弟姉妹たちの世話をするために、毎日家事に奔走していたメルは、ある日都会に出稼ぎに出ることを決意。
苦難続きの就活の末に、メルは騎士団の遠征部隊の衛生兵として採用される。戦力もなく、回復魔法の使えないメルは、おっかなびっくり遠征に従ったものの、そこで出された干し肉やパンの壮絶な不味さにショックを受け、自ら料理をすることになる。
メルは森に住むエルフの叡智を生かして、激マズの保存食や、遠征先で確保される謎の動植物を、絶品料理に変貌させる。
彼女の働きで体調が改善して戦力が上がったエノク第二部隊は、難しい任務を次々とこなして功績をあげていくけれども、魔力のないことをコンプレックスとするメルの自己評価は低いままで……
基本的に、遠征→ステキなごはん→任務完了→人間関係その他の進展……という繰り返しで進んでいく、シンプルなお話なのだけど、そのシンプルさが心地よくて、ずっと続けばいいのにと思いながら読んでいた。
作者さんがキリをつけて本編終了としたのが残念でならない。
「時使いの魔術師の転生無双 魔獣学院の劣等生、実は最強の時間系魔術師でした」(葉月秋水 著)
「小説家になろう」で連載されている作品で、すでに書籍化やコミカライズもされているようだ。
奨学金で難病の妹を養っている、アーヴィスという少年が主人公。
アーヴィスの生きる目的は、たった一人の家族である、妹の病気を治すこと。そのために、必死に勉強して魔術学院の奨学生になったものの、どんなに訓練しても属性魔法が使えないアーヴィスは、他の生徒にいじめられ、教師にも劣等生の烙印を押されて、退学を求められてしまう。
奨学生として学院に残りたければ、模擬試合で優等生に勝てと言われたアーヴィスは、妹を守るためだけに、ギリギリまで自分を追い込む訓練を続けた結果、図らずも前世の記憶の一部を取り戻すことになる。アーヴィスは、現世では完全に廃れてしまった、時間系の魔術の使い手だったのだ。
誰にも使えない魔法によって模擬試合に勝利したアーヴィスの前に、予想もしなかった新たな道が、猛スピードで開かれることになる。
スポンサー兼師匠との出会い。
ランクの高い学校への転校。
開花し続ける魔法の才能。
多くのライバルたちとの出会いと、信頼の絆。
恐ろしいまでのモテ期の到来。
そして、とてつもない陰謀を目論む巨悪との戦い。
どんなに世間の注目を集めても、アーヴィスにとっての1番は最愛の妹であり、勝利のためのあらゆる努力は、妹のためなのだ。
けれども自分を助けてくれる人には誠意を尽くすし、信頼を寄せられれば、目的を遂げるまで絶対にあきらめない。
そんなアーヴィスの姿は、深い孤独や空虚な思いを抱え込んでいる人々や、立場に囚われて人生を半ば諦めていたような人々の心を揺さぶって、運命を変えるような行動に駆り立てていく。
誰よりも高い能力をもちながら、自分自身には何の価値もないかのように生きるアーヴィスに、妹や仲間たちだけでなく、ライバルや敵だった人々まで、いつのまにか心を寄せて、全力で力になろうとする。
その結果、アーヴィスも知らないうちに、アーヴィスを慕う仲間たちによって、世界最強の厨二病組織「黒の機関」が結成されて、国家を揺るがす犯罪者集団を次々と駆逐したり、浮浪児や奴隷として売られていた子供たちを保護して英才教育をほどこしたり、「黒の機関」の関連グッズや、アーヴィス総受けの薄い本を売りさばいて大儲けしたりする。
ストーリーは自体はとてもシリアスなのに、アーヴィスの飄々とした人柄と、どこかズレた仲間たちの行動のせいで、重くるしさが全くなくて、勢いよく読み進めててしまった。
「小説家になろう」のほうでは、しばらく更新が止まっているようだ。ちょうどお話のキリのいいところだし、書籍化作業のためだろうか。続きの出るのが待ち遠しい。
他にもたくさん読んでいるけど、長くなっちゃったので、今回はここまで。