湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

ラノベと漫画読んだメモ

 

kindle読み放題で読んだ作品。

 

「運命の相手は、やんごとなき人でした」(佐倉 紫 著)

 

転生ものではなく、魔法や冒険もない、西洋風の貴族社会を舞台にしたお話。

 

侯爵の愛人の娘であるミランダは、母親とともに別邸に囲われていたけれども、正妻の差し金で苦しい生活を強いられていた。

 

執拗に虐待された挙句、母親は死亡。

残されたミランダは、たった12歳で、継母の息のかかった修道院に追いやられることになった。父親がミランダのために用意した高額の寄付金は、すべて継母に巻き上げられてしまい、継母の指示を受けた修道女たちによって、奴隷同然の扱いを受ける。

 

成人までの5年間、感情を殺すことで地獄の日々を乗り切ったミランダは、内面的にはかなりシニカルでパンチの効いた性格であると同時に、他人の痛みに敏感で深い思いやりのある女性に育っていたけれど、その素顔を他人に見せる機会はなかった。

 

正式な修道女になる前に、ミランダは一時帰宅を許される。継母に人生を支配されているミランダには、修道女になる以外に選択肢がなかったけれども、母親のかわりに自分を育てて守ってくれた乳母に再会することだけが、楽しみだった。

 

ところが、辻馬車で侯爵家の別邸に戻ろうとしたミランダは、修道院の前で待ち構えていた見知らぬ貴公子にいきなり「責任取って結婚しろ」と言われ、問答無用で連れ去られてしまう。

 

その貴公子は、実は王国の第二王子で、周囲の重い期待のせいで完全にグレて暴れていたところ、たまたま修道院入りする直後のミランダと出会い、こっ酷く叱られたことで衝撃を受け、更生の道を歩むと同時に、激しい恋に落ちたのだった。第二王子は、厳しい自己鍛錬を課して有能な王族として成長すると共に、ミランダが修道院から出るまでのあいだに、問題なく結婚するための根回しを徹底的に行っていた。ミランダの乳母も、継母に追い出されたあと、第二王子に保護されて、彼の屋敷で働いていた。

 

ミランダがそんな第二王子に恋をするのは時間の問題で、とくに大きな妨害もなく、いささかあっけない感じでハッピーエンドに至る。

 

あ、ラストあたりで、憎い愛人の娘が良縁に恵まれたことを知ってブチ切れた継母が、第二王子の邸宅に押し入って、ミランダを恐喝しようとするのだけど、第二王子の愛情によって虐待による洗脳を振り払ったミランダは、正当な怒りを叩きつけて継母を退ける。第二王子によって悪事の数々を暴露された継母は、侯爵にも離縁されて、ミランダの人生から消え去った。

 

シンプルで読みやすいお話だけれど、いろんな人間関係が育ち始めたばかりのところでエンディングになってしまったので、もう少し続きが読みたい気がする。本領発揮するミランダの活躍の場も、もっと見たかった。

 

 

「思いがけない婚約」(アリスン 漫画、ペニー・ジョーダン 原作)

 

こちらも、Amazon読み放題で読んだ作品。

 

ハーレクインコミックス系は、一時的に読み放題として公開する作品を入れ替えているようだ。入れ替えのタイミングや公開期間がわからないので、公開分を読み尽くしたら、しばらく時間を置いてから、検索して探している。

 

ヒロインのキャリーは、父親が経済顧問を務める公国のリュク王子にダメ元で恋心を打ち明けたところ、もとからキャリーを思っていた王子にあっさり受け入れられて、深く結ばれる。

 

ところがその結ばれた翌日、キャリーは、王子の意向を受けたという伯爵夫人に手切れ金を渡され、国外退去を言い渡される。

 

王子が伯爵夫人の孫娘と結婚する予定であり、自分との関係は一時的なはけ口に過ぎないと王子が話していたと聞かされて、逆上したキャリーは、王子の人格を全否定して貶める言葉を夫人に託して、母国であるイギリスに帰国。

 

もちろん王子の言葉は、自分の孫を未来の王妃にしたい伯爵夫人のねつ造であり、キャリーの吐いた罵詈雑言は、伯爵夫人の口から正確に王子に伝えられたため、二人の仲は、たった一夜で完全に決裂して、その後連絡を取り合うこともなく、終わってしまう。

 

大切な話は、あいだに人を挟まずに、直接確認したらいいのにと思うけれども、確認しちゃうと話がこじれず、物語にならないのだから、仕方がない。

 

それから8年後、有名な経済ジャーナリストになったキャリーは、自分の弟が、リュク王子の婚約者である伯爵家令嬢と極秘結婚したと聞かされ、驚愕する。

 

令嬢は弟とともに公国を飛び出し、二度と戻るつもりがないので、王子にもらった婚約指輪を返しに行って欲しいとキャリーに頼んだ。

 

自分の弟の尻拭いのために、仕方なく公国を訪れて、戴冠して国王になったリュクに指輪を返したキャリーは、その場で彼の婚約者にされてしまう。リュク国王は、キャリーの弟が違法すれすれの取引で儲けていたという情報をつかんでいて、それを脅しのネタにしてきたのだ。

 

かつて自分を手酷く捨てたリュクに利用されることに憤ったキャリーは、ことあるごとに反抗してみせるものの、辣腕ジャーナリストとしての目で周囲を眺めるうちに、国王としてのリュクが、極めて有能であるとともに、民主化を求める活動家たちによるクーデターの危機にさらされて、常に緊迫した政治的決断を求められていることに気づいていく。

 

その後、8年前の誤解も解けて、最終的にはキャリーが王妃に収まってハッピーエンドを迎えるのだけど、短い漫画の中に、国王の婚約破棄と結婚、民衆の暴動、反体制集団との密談、マフィアの資金源の粛清、王妃暗殺未遂事件、国王狙撃事件など、政治的な大事件がてんこ盛りに収められていて、ある意味壮絶だった。

 

この作品を描いておられる、アリスンという漫画家さんのハーレクインコミックスは、シリアスなお話の中に、ほんの少しだけ笑える小技が仕込んであったりするので、結構お気に入りである。

 

 

「逃げた天使」(ながさわ さとる 漫画、サラ・ウッド 原作)

 

かなり複雑なお話。

 

ヒロインのトリッシュは、学生のころから、15歳年上のアダムに叶わぬ恋をしていた。

 

離島出身のトリッシュは、かつて進学のために家を離れ、アダムの家に下宿していた。当時のアダムは妻帯者で、トリッシュにとって素晴らしいホストファミリーだった。

 

ところが、トリッシュの滞在中にアダムの妻が末期ガンで亡くなってしまう。トリッシュは、ホスピスでの彼女の介護を献身的に手伝い、妻の死を受け止めきれないアダムに寄り添って、立ち直るまで支え続けた。

 

妻を失ったアダムとの親密な日々の中で、自分の思いを自覚したトリッシュは、アダムに気持ちを伝えることなく、下宿を出て離島に帰ってしまう。

 

妻の死後、トリッシュに心を寄せて依存していたように見えたアダムも、思いをトリッシュに伝えることはなく、引き止めようともしなかった。

 

数年後、離島でゲストハウスを営んでいるトリッシュの元に、アダムの婚約パーティーへの招待状が届く。

 

叶わぬ恋に終止符を打つために、パーティーに出席したトリッシュは、アダムの再婚相手に散々な皮肉と嫌味をぶつけられたことから、パーティーをさっさと抜け出し、アダムになにも告げずに離島に戻る。

 

ところがその後、トリッシュのゲストハウスに、アダムが突然やってきて、長期滞在するといって居座ってしまう。

 

結婚を目前に控えたアダムは、自分の心が婚約者ではなくトリッシュにあることを悟り、その思いにケリをつけるという理由をつけて、トリッシュに会いにきたのだけれど、実際にやったことは、徹底的なトリッシュ攻略だった。

 

当然トリッシュは混乱し、アダムを追い払おうとするものの、アダムがゲストハウスの従業員や近隣の人々を味方につけて、外堀を埋めてくるので、つい絆されて、アダムを受け入れてしまう。

 

アダムは婚約を破棄してトリッシュ選ぶと約束するけれど、愛情をはっきり示さず、肝心なところで心を隠してしまうアダムを信頼しきれないトリッシュは、何かにつけてアダムを責めるようになる。

 

そんなときに、アダムの元婚約者から、自分たちがよりを戻したという、偽りのファックスが届いたため、トリッシュの不信感が爆発。アダムは即座に誤解を解いたものの、いつまでたっても自分が信用されないことに失望し、トリッシュに別れを告げる。

 

ハーレクインでは希有なバッドエンドの予感に心踊るいとまもなく、トリッシュがアダムに本心を語るように迫る。

 

アダムには、かつて、養護施設で暮らしていたころに、強い共依存関係にあった双子の兄弟を病死で失った過去があった。

 

前妻は、元はアダムのカウンセラーであり、二人の結婚はお互いの心の穴を塞ぐためのものだったため、夫婦の間には支え合う絆はあっても情熱はなかったという。妻は生前、アダムのなかのトリッシュへの無意識の恋心にも気づいていたようで、自分の亡き後には夫がトリッシュと結ばれることを期待していたらしかった。

 

なにはともあれ、元妻の病死は、兄弟を失ったトラウマをさらに深めるものだったわけで、その癒しがたい孤独から彼を救ったのは、トリッシュに他ならないのだと、アダムははじめて告白した。

 

で、二人はめでたく離島で結婚、出産、育児、おしまい。

 

ハッピーエンドなのに、なんとなく釈然としないのは、15歳年下のヒロインが背負うには、アダムの闇が深すぎると感じるからかもしれない。

 

そもそも、長いこと放置した挙句、別の女性と婚約してから、ようやく求愛に本気出すとか、百歩譲ってもダメ男のやることだと思う。

 

それと、このアダムという人、IT関係で成功した経営者らしいけど、報連相の基本がさっぱり出来ていない。離島にも電話やファックスがあるのに、ヒロインの元を離れた途端、最小限の連絡すら入れず、大事な報告や相談もしないから、横槍が入るたびに話がこじれてしまうのだ。

 

そのまま改善しなければ、20年後くらいに、たくましい女性になったトリッシュに捨てられているかもしれない。