パンク
Amazon primeビデオで「フィンランド」映画を探したら、「パンク・シンドローム」という作品が出てきた。
「ペルッティ・クリカン・ニミパイヴァト」というパンク・ロックバンドのドキュメンタリー映画だという。
いつもの如く、まったく予備知識なしに見始めて、バンドのメンバーのパンクの方向性が、
「反健常」
であるらしいことに気が付いた。
歌詞が、厳しい。
精神科施設のメシは まるで豚のエサ
誰にも話すな 刺し殺される
夏休みは要らねえ 行く所がない
音楽の音量を下げろと しかられるのがオチ
ペルッティは知的障害者 コーヒーはもらえない
ペルッティは言語障害者 パーティは開けない
ペルッティは知的障害者 コーヒーはもらえない
ペルッティは脳性マヒ パーティは開けない
多動性障害 多動性障害 多動性障害 多動性障害
ペルッテイ氏は、バンドでギターを弾いている。
年齢はわからないけど、五十代以下とは思えない。服の縫い目に強烈なこだわりがあり、気になると、誰の服だろうと、布地をぐいぐい引っ張りながら顔を思いっきり近づけて、詳細に確認せずにはいられない。
そのガチなこだわり行動と、マイノリティとしての怒りの絶叫、人生への繊細で情愛深い思いを語る吃音とを、全部合わせたものが、彼の表現だ。
ヒット曲「権力者はペテン師」も、すごかった。
字幕を引用させてもらう。
権力者は やっかい者をすぐに閉じ込めちまう俺たちはごめんだぜ 施設に引きこもるなんて
誰も振り向かない 遊びにくる奴もいない
部屋にいてどうなる?
障害者ばかりの施設の中で
権力者はペテン師だ 俺たちを閉じ込める
障害者のことなんて 何も考えちゃいない
権力者はペテン師だ 俺たちを閉じ込める
障害者のことなんて 何も考えちゃいない
メンバーの日記や、日常の思いから生まれてくる言葉であるという。
もっとストレートな政治批判、国会議員罵倒の曲もあった。
でも映画の最後で、ペルッテイ氏は、バンドの代表として首相のパーティに招待され、正装で出席していた。
彼らの表現は、国に受け入れられて、その生きにくさも含めて、大切に守られているように見えたのだけど、それが映画の演出によるものかどうかは、私にはわからない。
見る人を選ぶ映画かもしれない。
冒頭、重度の知的障害者の家族なら日常的に見ているような情景が、そのまま、いろんな意味でむきだしに、モザイクなしに、画面に出てくるのだけど、レビューを見ていると、その時点で振り落とされて見るのをやめた人もいるようだった。いわゆる感動ポルノ的な「障害者がけなげに頑張る、いい話」を期待して身始めた人ほど早期リタイアするかもしれない。
映画をみた限りでは、フィンランドという国の、障害者福祉に対する考え方は、日本とはかなり違っているように思えた。
一番違っているのは、性の問題を障害者から遠ざけないことかもしれない。
彼らは学校で、性行為に関することを、具体的かつ詳細に習っている。ペルッテイ氏は、親しい介護者の男性の妻が妊娠したと聞いて、心から祝う気持ちを言葉で表すために、習い覚えた性行為から受胎、出産に至るまでの過程を、尊いこととして、詳細かつ丁寧に語ってみせる。
癇癪を起こすことのあるバンドメンバーのボーカルが、恋人との結婚を考えて、子作りの方法を具体的に知りたいからネットで調べてくれと、ベース担当に頼むけれども、そういうことに興味のないベース担当にきっぱり断られたため、スタッフに頼む。頼まれたスタッフは「学校で習ったろ?」といいながらも、性行為のシーンがバッチリ入っているビデオテープを出してきて貸してくれる。ボーカルの男性は、自室でそのビデオを再生し、心から幸せそうに見つめていた。
メンバーのドラム担当の青年は、自宅で両親と暮らしていたけど、カラオケで自分にキスしてくれた女の子に片思いしていて、彼女が住むグループホームへの入居を希望していた。
ところがホームに見学に行ってみると、好きな女の子が彼氏持ちであることが発覚。カラオケでのキスは軽い気持ちでしただけだと言われてしまい、さらにタイミングの悪いことに、その彼氏ともばったり遭遇してしまう。思いの叶えられないことを悟ったドラムの青年の表情は、気の毒なほど分かりやすく暗転。自宅に戻って荒んだ顔でカラオケをやっていた。グループホームへの入居の話は、うやむやのまま流されたようだったけど、どうなのか。
書き足りないことはまだまだあるけど、睡眠導入剤が効いてきちゃったので、今夜はここまで。、
蛇足
薬の飲み忘れ防止のために、飲んだらブログを書くというのを習慣化しようと思ったけど、とりあえず保留。