湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

長すぎた

 

最近「小説家になろう」サイトで読んだ作品のメモ。

 

すでに書籍化されている作品が多いので、Amazonのリンクを貼っておくけれども、私は全て「なろう版」で読んでいるので、もしかしたら、書籍版とは内容が違っているかもしれない。

 

○ jupiter「あなたに捧げる赤い薔薇」

 

あなたに捧げる赤い薔薇 (アイリスNEO)

あなたに捧げる赤い薔薇 (アイリスNEO)

 

 

貴族の父親と娼婦の母親との間に生まれた娘、オフィーリアが主人公。母親の死後、父親の屋敷に引き取られたものの、その父親に執拗に虐待され、奴隷のような扱いを受けていた。

 

そんなオフィーリアに、裕福な貴族であるオルフェウス伯爵から、父親への融資と抱き合わせの縁談が舞い込む。事業に失敗して資金繰りに困っていた父親が縁談に飛びついたため、是非もなく嫁ぐことになったのだけれども、オルフェウスは彼女の痛みや孤独を理解し、結婚を急ぐ自分の側の事情や思いを誠実に伝えた上で、彼女を守ることを約束してくれた。オフィーリアも、オルフェウスを信頼して、よき伯爵夫人になると誓う。

 

けれども、オフィーリアが伯爵邸に入る日、彼女を出迎えたオルフェウスの横には、彼と同居している従姉妹のダイアナが恋人のように寄り添っていた。

 

ダイアナは病気で盲目となり、両親をも失っていたため、オルフェウスが自邸に引き取って世話をしていたのだが、彼女とオルフェウスとがただならぬ関係であることは、社交界でも公然の秘密とされていることだった。伯爵邸の使用人たちも、申し分なく気立てのいいダイアナに同情的で、嫁いできたオフィーリアには冷淡な態度を取る者も少なくなかった。

 

もともと愛のない結婚であることを受け入れていたオフィーリアは、それでもオルフェウスのために、伯爵夫人としての責務を果たそうと頑張った。

 

けれども、ある日、オルフェウスがダイアナと二人きりで庭園を散歩しているのを見かけ、ダイアナに向かって、自分には絶対に見せないような、心からの愛情の溢れる笑顔を向けていることを知ってしまったために、もうこの結婚を続けることはできないと悟ってしまう。

 

オルフェウスが自分に求婚したのは、彼の亡き父の遺言のためだとオフィーリアは聞いていた。オルフェウスの父親も、かつてオフィーリアの母親に恋していて、その遺児であるオフィーリアが、実父に引き取られて虐待されていることを知ったため、自分の息子と結婚させて救おうと考えたのだ。その遺志を、オルフェウスは誠実に果たしたのである。

 

オフィーリアは、自分の存在が、オルフェウスとダイアナの仲を割いてしまったことに苦しみ、自分さえ離縁になれば、二人を添い遂げさせることができると考えた。

 

けれども、実父に融資してもらっている立場のオフィーリアが、なんの落ち度もないオルフェウスに離縁を申し出ることはできないし、ダイアナの存在を理由に離縁することになれば、不倫に厳しい世間は、オルフェウスとダイアナを叩くかもしれない。すでにオルフェウスを深く愛してしまってきたオフィーリアにとって、どんな形であっても彼が傷つくことは耐え難かった。

 

そこでオフィーリアは、誰が見ても離婚されて当然と思うような、そしてオルフェウスが良心の呵責なしに捨てられるような、とんでもない悪妻を演じることにした。夜遊びと浪費にふけり、自邸にいれば夫人としての責務も果たさず、挙句の果てに公然と愛人まで作ってみせた。

 

ところがオルフェウスは、妻にどんなにひどい仕打ちをされても、絶対に離婚しようとしなかった。必然的にオフィーリアの悪妻演技はエスカレートしていき、オルフェウスを執拗に傷つける言動を繰り返するようになる。

 

最愛の夫を傷つけることは、オフィーリア自身にとっても深い心の痛手になるにもかかわらず、離婚の実現こそが夫を幸せにすると信じて疑わない彼女は、自分自身を止めることができない。そして、夫が離婚に応じない唯一の理由が、実はオフィーリアを深く愛しているからだということに、オフィーリアだけが決して気づくことがない。父親に虐待され続け、価値のない存在であると言われ続けた彼女には、自分に愛される可能性があることが分からないばかりか、愛から全力で後退して不幸になることこそが、正しいと思えるのだった。

 

というわけで、登場人物たちの背後事情がある程度見えてくると、この夫婦の軋轢がオフィーリアの自傷行為にしか思えなくなってくる。

 

愛に絶望しすぎていて、もはや愛情にアナフィラキシーすらおこしかねないオフィーリアが、実は夫に愛されていたことを知った時、まともにハッピーエンドが来るんだろうかと危惧しながら読み進めてあら、案の定、最悪の事態となった。

 

夫の愛が真実であると分かった途端、オフィーリアはいたたまれずに自邸を飛び出し、森で遭難しかける。たまたま出奔に気づいた侍女の一人に発見されたものの、その侍女は、実は身分を隠してオフィーリアの愛人役を演じてくれていた、自称同性愛者の王子の護衛だったため、そのまま王子の邸宅で保護されることに。最愛の夫であるオルフェウスが血相変えて迎えに来て、全力で復縁を求めても、混乱したオフィーリアは妻の立場に戻る気持ちになれず、答えを保留したまま王子邸に留まる。

 

ところが、オフィーリアの帰宅を説得するために王子邸を訪れたダイアナが、その帰路で何者かに誘拐されてしまう。犯人は、ダイアナを生かしたまま引き渡す条件として、オフィーリア単独で交渉にくるようにと伝えて寄越す。

 

どう考えても罠であるのに、自傷と自暴自棄にかけては誰にも引けをとらないオフィーリアは、迷うことなく犯人の元に一人で向かい、ダイアナの解放には成功したものの、殴られて拉致される。運ばれた先はオフィーリアを監禁して殺す気満々の父親が待つ実家だった。

 

いろいろ省略するけれども、父親に絞殺される寸前で、オルフェウスと王子たち救われたオフィーリアは、ようやく最愛の夫と共に生きること道を選ぶ。その先には、自分で築きあげた超悪妻の汚名を晴らすという、難事業が待ち構えているのだけれども、自傷にかわる困難がなければ、オフィーリアは幸せを受け止めきれなかったかもしれない。

 

 

○Jupiter 「出戻り令嬢の再婚」

出戻り令嬢の再婚【特典SS付】 (アイリスNEO)

出戻り令嬢の再婚【特典SS付】 (アイリスNEO)

 

 

上の「あなたに捧げる赤い薔薇」と同じ作者さんの小説で、やはり登場人物の抜き差しならないトラウマが、結婚生活に波乱をもたらす物語である。

 

ただ、こちらの作品のトラウマの主は、主人公である出戻り令嬢ではなく、彼女の再婚相手の伯爵である。

 

前夫のモラハラが原因で離婚したミランダは、社交界では、なぜか暴力女として名を馳せていた。

 

前夫は、結婚直後から冷たい態度をとるようになり、ミランダがどんなに歩み寄って努力しても、家庭内でのモラハラ行為をやめようとしないばかりか、妻の至らなさを理由に浮気を公言する始末だった。我慢と寛容を自らに課していたミランダは、前夫の浮気すらも受け入れて許そうとしたけれども、前夫はそんなミランダの態度になぜか激怒し、殴りつけてきた。

 

それまで、夫との婚家に対してとことん従順だったミランダは、反射的に殴り返すと同時に、この結婚はもうダメだと悟った。

 

結果、離婚が成立したものの、前夫の一族は破局の原因がミランダの暴力にあると言いふらし、前夫側の問題を伏せたために、ミランダの悪評のみ広がることになったのだった。

 

散々な離婚から一年後、ミランダに再婚話がもたらされる。縁談を持ってきたのは、離婚手続きで世話になった弁護士で、相手は弁護士の甥であるという。

 

ミランダは気が進まなかったけれども、娘の心情よりも世間体を気にかける両親に追い込まれるようにして、縁談を受けることにした。

 

十分な地位と資産があるにもかかわらず、弁護士の甥のヘンリーには、なかなか結婚できない訳があった。幼少時に自宅の火災に巻き込まれて、顔に酷いやけどを負っていたのだ。

 

そればかりか、息子を助けようとした母親が逃げ遅れて焼死したため、愛妻家だった父親がヘンリーを疎んで、やけどした顔を見せるなと言ったり、財産狙いの親族たちに、母親を犠牲にして生き残ったことを責め立てられたりしたため、極度の醜形恐怖と人間不信に陥ってしまったのだった。

 

結婚が決まったミランダとヘンリーは、文通はしたものの、一度も面会することなく、結婚の日を迎えた。手紙の文面から、ヘンリーの繊細で豊かな感受性を感じ取っていたミランダは、結婚生活に前向きな気持ちになっていた。

 

けれどもヘンリーは、ミランダとろくに言葉も交わさないまま結婚式を挙げ、その後のパーティには出席せず、初夜も辞退。自分の妻となってくれた女性に対して、ヘンリーは深く思いを寄せると同時に、嫌われることや傷つくことを恐れて、極度に緊張していたらしい。ミランダには、そんなヘンリーが、たとえようもなく可愛く思えるのだった。

 

それからの二人の生活は、まるで臆病な野生動物を根気よく餌付けし、心を許すのを待つかのような様相を呈した。普通の夫婦関係とは言えなかったけれども、ミランダは、前の結婚でも実家でも味わうことのなかった心温まる暮らしを喜び、幸せはそのまま続くかに思われた。

 

しかしそれで話が終わるはずがなく、当然のように、胸糞悪い事態が発生する。

 

ヘンリーの母方の叔母が、ミランダとの結婚に横槍を入れるために乗り込んでくる。この叔母は、ヘンリーのせいで母親が死んだと罵り、ヘンリーの遺産相続にも反対した人物であった。

 

ミランダの前夫も、なぜか復縁を迫る手紙を寄越す。前夫がミランダに冷たい態度を取ったのは、ミランダの愛情を試すためだったのであって、本当は愛していた云々という、いかにもモラハラ男の手口らしい言い訳が書いてあったのだけれども、手紙を処分せずに隠していたのをヘンリーが見つけてしまったため、二人の関係が変な方向にこじれてしまうことになる。

 

さらには、前述のヘンリーの叔母が、面識もないはずのミランダの前夫と結託して、二人を離婚させるためにヘンリー邸に乗り込んでくるという、謎の展開に至る。いくら悪役とはいえ、ここまで頭がおかしいのもどうかとは思うものの、他者の人格を平気で壊せるような人々だから、破綻した行動を取っても不思議はないのかもしれない。とはいえ、ほんとに乗り込んでくる前に、誰か止める人はいなかったのかとは思う。

 

ここに至るまでに、盛大な紆余曲折はあったものの、ヘンリーは何とか無難なレベルまでトラウマを克服していて、夫婦の絆も確かなものになっていたので、二人で力を合わせて、胸糞悪い来訪者を撃退して、ハッピーエンド。

 

 

○jupiter 「訳あり令嬢の結婚」

 

訳あり令嬢の結婚【特典SS付】 (アイリスNEO)

訳あり令嬢の結婚【特典SS付】 (アイリスNEO)

 

 

前の二作に比べると、トラウマ要素が少ない作品だった。

 

伯爵令嬢のマーガレットは、結婚式の当日に、新郎と自分の妹が駆け落ちしたことを知り、愕然とする。

 

ところが結婚式の中止を招待客に告知する前に、別の男性に突然求婚され、新郎を自分に変えて式を挙げることを提案される。

 

求婚してきたのは、マーガレットを毛嫌いして、ことあるごとに底意地の悪い態度を取ってきたレイモンドという男性だった。

 

とんでもない話だったが、レイモンドの公爵という地位と財産に目のくらんだマーガレットの義母が乗り気になったため、新郎をすげ替えた結婚式が強行されることとなった。

 

マーガレットは、父親が使用人に産ませた娘で、実の母親が死んだ後に、政略結婚の駒として引き取られたという立場だったため、義母に逆らうことが難しかったのだ。

 

ありえないような経緯で公爵家に嫁いだマーガレットは、それまで徹底的に意地悪だったレイモンドが別人のように優しくなり、暑苦しいほどの愛情を示すことに困惑し、何か裏があるのではと疑う。けれども、レイモンドはどこまでも誠実で、本当はずっと前からマーガレットが好きだったのに、他人の婚約者だから諦めようとして、わざと意地悪な態度を取っていたのだと告白する。

 

次第にレイモンドを信じて心を寄せるようになったマーガレットは、継母にいじめられても心折れることのなかった、本来の負けず嫌いな性格を発揮して、社交界の誹謗中傷やいじめを気丈に撃退し、唐突な結婚に反感を抱いていたらしいレイモンドの親族とも堂々と渡り合ううちに、彼らとも心を通わせるようになり、なにもかもうまくいきそうになったところに、お約束のように災厄が訪れる。

 

マーガレットの元婚約者を略奪して駆け落ちした妹が、こともあろうにレイモンドの屋敷に転がり込んできたのだ。

 

妹は本妻である義母の実の娘で、継娘をいじめ抜く母親を見て育ったためか、絵に描いたような性悪だった。

 

姉の婚約者を奪って駆け落ちしたものの、両家から勘当されて暮らしていけるはずもなく、結局実家に連れ戻されて閉じ込められそうになったので、今度は姉からレイモンドの妻の座を略奪すべく、押しかけてきたのだった。

 

どう考えても無茶な話だけれども、「訳あり令嬢の再婚」の悪役たちよりは、マーガレットの妹の方が若干狡猾だったようで、ちんけではあるものの、それなりの勝算があった。

 

妹は腹違いのマーガレットよりも華やかな容姿を持っていて、それを利用して周囲の人間の同情を買ったり騙したりすることに長けていた。レイモンドの屋敷での門前払いを回避した彼女は、マーガレットに、自分の滞在を認めなければ、卑しい出自であることを公爵家の人々に暴露すると言って脅し、同居の権利を勝ち取ってしまう。

 

けれども性悪の妹の思い通りになったのはそこまでで、マーガレットは公爵家から追いやられる覚悟をした上で、自分の生まれのことを自分からカミングアウトした。蓋を開けてみれば、レイモンドを含む公爵家の主だった人々は、そのことをとっくに知った上でマーガレットを家族の一員として受け入れていたのだった。

 

無事に妹を駆逐すると、今度は、実家で軟禁されていたはずの元婚約者が押しかけてきて、マーガレットに取りすがって許しを請うけれども、マーガレットに強烈なビンタを食らっただけだった。

 

容姿は地味だけれども心美しい姉と、華やかな美人なのに中身が腐った妹というのは、ハーレクインあたりでは定番の姉妹関係で、成り行きも想像できるので、安心してハラハラできた。

 

 

○ jupiter「できれば冷たくしていただきたいのですが」

 

同じ作者さんの小説だけれども、まだ書籍化されていないのか、Amazonの検索では出てこない。

 

ヒロインの家族関係のトラウマが結婚生活を不条理なものにするという点では、最初に挙げた「あなたに捧げる赤い薔薇」と同系統で、愛する夫を幸せにするために身を引こうとするところも似ているけれども、不思議なほど陰湿さを感じない。

 

いや、彼女をいじめ抜いている継母や義妹たちのやり口は十二分に陰湿なのだけども、いじめられているヒロインがマゾヒストであるために、いじめられればいじめられるほど、うっとりとして幸せそうで、雰囲気が陰惨になりきれないのだ。

 

ヒロインの健気さに惚れて結婚した夫は、彼女が虐待に過剰に適応していると考えて、なんとかトラウマを癒そうとして、ひたすらに愛情を示すけれど、人に優しくされると不安と恐怖で鳥肌が立つ体質のヒロインは、内心では夫に冷たくされることを願いながら、必死で夫の愛に耐えている。

 

悲惨だけれども悲惨になりきれない物語は、夫が別の女性を愛していると思い込んだヒロインが、みずから失踪することで夫を幸福にしようとして行動にうつしたことから、落とし所めがけて収束する。もちろんハッピーエンドである。

 

ただ、彼女の結婚後も頻繁に実家に呼んでをいじめ抜いていた継母は、自分が虐待に依存していることに気づき、心の底から気に入らない継娘を遠ざけたほうが心が平和になると知って、継娘を実家からシャットアウトすることを決意する。継母に本当の意味で切り捨てられたことを理解し、深い悲しみを覚えるのだった。

 

途中だけど、猛烈に眠くて「ミスタッチ」ばかりするらわかるなら、今日はもう寝る。