湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

口撃・伊勢物語

なんか蒸し暑いしだるいし退屈なので、気晴らしに、伊勢物語」の第五十段を、意訳してみた。

 

在原業平らしき「おとこ」が、浮気癖があるらしき「女」と、歌でバトルしている話だ。

 

古典の解釈としては大いに問題アリだが、私にはこういうふうに「読める」っていうことで…。

 

(あ、原文は末尾に載っけました)



伊勢物語 第五十段の、個人的意訳】


昔、男がいた。
やたらと自分を恨んで腹を立てている女に対して、男のほうもブチ切れて、メールを送ってやった。

 


いいか、よく聞け! この馬鹿オンナ!

 

ここにニワトリのタマゴが100個ある。
これを1セット10個づつ、縦に積み上げて、10本並べるなんてこと、出来るはずないって思うだろ?


俺にだって出来ないさ。普通はな。

 

でも本気で恋した女がそれを望むなら、タマゴタワーなんぞ何十本だって建ててやる。それが俺だ。

 

だけどな、俺をコケにして他の男と二股三股かけるようなクソビッ○を愛しく思うなんてことは、スーパーウルトラ級の愛の男である俺にだって、金輪際不可能なんだよ! 

そこんとこ分かっとけや (#`皿´)ゴルァ!!

 

 


男がクソ○ッチ(#`皿´)ゴルァ!!  という歌を送ってやると、受け取った女から返信があった。

 

 

二股三股ですってぇぇぇぇ!?
その言葉、そのまんまアンタにお返しするわ!


なーにが愛の男よ!
スプリンクラーみたいに全方向に愛の汁まき散らして歩くヤツに、タマゴを積んだりする繊細なデリカシーがあるもんですか!

あんたに比べりゃ夏場の砂地に噴射してるスプリンクラーの水滴だって、少しは湿り気を残しそうなもんだわよ!
もう金輪際、あんたの愛の言葉なんか信じないんだから!

 


女の罵詈雑言を受けて、男もまたマジキレのメールを送った。

 


てめえこのアマ言うに事欠いてスプリンクラーだと!?
絶倫なのは否定しないがお前の喩えは下品すぎるわ!

 

どうせ喩えるなら千本桜くらい出してみろや!

咲いたかと思えばちょっとばかりヨソから風が吹いたくらいで 全方向まんべんなくウザいほど花びらまき散らしやがって!

 
少しは掃除する皆様のご苦労も考えろってんだ!

 

たまーに去年のやつがひからびて、どこぞに貼り付いてたりするだろ?

 

あれなんか、うすっぺらい媚びのなれの果てそのもので
心底うざキモいんだわ。

 

お前みたいなブリブリ桜オンナがこの世から絶滅すれば、
さぞかし俺も心安らかに暮らせるだろうよ。

 

 


当然、女から反撃が来た。

 

 

だ・れ・が、ブリブリ桜オンナよ?!

 

このド腐れ外道が、どこまで自分を棚上げしてんのよ!

アンタに売る媚びなんか、着てるモノ全部逆さにして振り回したって出てこないっつの!

 

なによっ
どーせ最初っから遊びだったくせに、ハンパに真面目ぶって見せるのやめたら?

 

いくら待ってたって全然会ってくれないし、こっちからメールすればウザがられるし!

 

あっちこっちに愛人いるって噂聞かされて、アタシがどんな気持ちだったと思う?

 

アンタの言う愛情なんて、猛烈にオシッコ漏れそうなひとが情熱的にトイレさがしてんのと一緒だわ。


水洗便所にざーっと流してあーすっきり、ハイおしまい、みたいなもんでしょ?

 

どうせアタシに会った回数だって、覚えてないんでしょ!
アンタみたいな脳みそ水洗便所男、こっちからお断りよ!
もう連絡してこないで!

 

 

女の絶縁メールに、男は最後の返信をした。

 

 

ったく、どこまでも下品尾籠な女だな!

 

だったらお前は今まで流した水洗便所の数を覚えてるとでもいうのか!?

 

どうせ数え切れないだろーが!
びらびらバラまいた媚びの枚数と一緒で!

 

俺を待ってたとか言うけどな、俺はお前に「待ってろ」なんて言ったことは一度もないぞ。
言ってもどうせ無駄だしな!

 

流れる川とか植物とか老化現象とか尿意とかお前とか、人の話をこれっぽっちも聞かないヤツに、言葉でお願いする趣味なんかねーんだよ!

 


……とまあ、お互いに相手の浮気っぷりをあげつらいつつも、せっせと密会に励む、似た者同士の二人であった。

 

(おわり)

 

 

 【原文】

 

昔、をとこ有けり。恨むる人を恨みて、

鳥の子を十づつ十は重ぬとも思わぬ人をおもふものかは 


といへりければ、


朝露は消えのこりてもありぬべし誰かこの世を頼みはつべき

 

又、おとこ、


吹く風にこぞの桜は散らずともあな頼みがた人の心は

 

又、女、返し、

行く水に数かくよりもはかなきは思わぬ人を思うなりけり

 

又、おとこ、


行く水と過ぐるよはひと散る花といづれ待ててふことを聞くらん


あだくらべかたみにしけるおとこ女の、忍びありきしけることなるべし。

 

 

↓ この本から引いた。