若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」読了。
冒頭から凄かったけど、後半は圧倒的すぎた。
言葉もない。
桃子さんに、外から与えられる宗教は必要なかった。
考えて考えて、恐ろしい孤独と痛みに耐えて、感じられる、あらゆることを感じて、自分を刻み尽くして、意味を求めて意味を生み出して、その先に現れたものは、恐らくは原初の人の営みに寄り添っていた信仰と同じ姿のものだったのではないか。あるいは仏教やキリスト教を生み出したひとのそれと。
マンモスの肉はくらったが。うめがったが
そう叫び、自分の内側と太古からの人類の歩み全てを結びつけた桃子さんは、もう、人間ひとりの命をはるかに超えていた。
行を追うごとに間近に迫る死と自分を見据えて、最後の最後に、こういう気づきがくる。
ああそうが、おらは、人恋しいのが
伝えねばわがね。それでほんとにおらが引き受けたおらの人生が完結するのでねべが。
この作品そのものが、「桃子さん」という、架空の物語のなかで生きたひとの人生が、現実の世界で完結することを保証している。
たしかに、伝えられたのだから。
この本、自分が死ぬ間際に思い出す一冊になりそうだ。
この、特別小冊子って、なんだろう。
気になるので、見てこよう。
玄冬小説か。
追記。上の小冊子はKindle版で無料ダウンロードできる。小説の一部と、作者の文藝賞授賞式でのスピーチとお写真が掲載されている。