活気と腐敗と救いのない気持ち悪さではち切れそうな、平安初期の日本で、どうやって生きて死んだらいいのかを命懸けで見つけようとした人たちの物語。
こういう話をみていると、空海という人間離れした人が、どんな言葉を残したのか、じかに読んでみたくなる。
空海「秘蔵宝鑰」 こころの底を知る手引き ビギナーズ 日本の思想 (角川ソフィア文庫)
- 作者: 空海,加藤純隆,加藤精一
- 出版社/メーカー: 角川学芸出版
- 発売日: 2010/04/25
- メディア: 文庫
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空海の「秘蔵宝鑰(ひぞうほうやく)」は、もともと漢文で書かれているはずで、その漢文を直接読みたいと思って探したら、東大の附属図書館が写真版をネット公開しているのが見つかったので、昨日はそれを眺めていた。
(毎度のことながら「秘蔵宝鑰」を一発変換してくれるiPhoneの辞書はほんとにすごい。どんなユーザーを想定してるんだろう)
人間は、自分が生まれてから死ぬまで、自分が知らない世の中で、どんなことが起きていたのか、どんな人々のとんでもない努力があって今の世になっているのか、何にも知らず、知らないということにも気づいていない……
こんなことを言われて、視点を四次元にぐいーーっと引っ張られ、強引に視野を広げられると、自分がとんでもなく広大に根を張った樹形図的なマンモス大樹の、ほんとに細い枝先にかろうじてぶら下がっている、小さな実になったような気分になる。
そのうちどこかに落っこちるのだろうけど、落ちた自分を起点にして、またとんでもない数の出来事が連なっていき、因果の樹形図が生い繁り広がっていく様を想像しただけで、画面酔いしそうになる。
空海という人が、もしも現代に生まれていたら、人間社会の歴史や科学、医学などに精通して、人の心に訴える哲学書を量産しながら各地に驚異的な建造物を生み出していく、奇妙なクリエイターになっていたかもしれない、などと想像してみる。