ティム・バートンは、ちょっと怖い。
子供の残酷な運命を、当たり前のように描くから。
そしてその子どもたちも、当たり前のようにその運命に閉じ込められて暮らしているから。
でも「ミス・ペレグリン」の予告編を見たら、どうしても本編をみたくてたまらなくなった。
ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]
- 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
- 発売日: 2017/06/02
- メディア: Blu-ray
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時間の流れから永遠に切り離された過去の空間のなかで、人の世では生きられない特別な能力を持った子どもたちが、暮らしている。
彼らを守っているのは、時をあやつることのできる、ミス・ペレグリン。
同じ24時間が延々と巻き戻されて、彼らの居場所になっている。
第二次世界大戦中の、静かな一日。
夜、ナチスドイツの爆撃機が、家に爆弾を投下した瞬間、ミス・ペレグリンの能力で、その日の朝に時間が戻る。そしてまた一日が始まる。
時が流れないから、子どもたちは成長しない。
守られるだけで、意味をなさない暮らしの中にあって、狂った方向に成長を遂げようとするものが出て来てしまったのは、無理もない話だったことだろう。
怪物に殺された祖父の遺言に従って、かつて祖父を保護していたというミス・ペレグリンと出会った主人公は、祖父も自分も異能力者であったことと、祖父を殺した者たちが、かつては祖父たちと同じ仲間であったことを知る。
殺戮者たちは、ミス・ペレグリンと同種の、時間を操る保護者たちの能力を奪取して、より強大な存在となり、さらに同胞たちを殺して食らうことで、思いのままに生き続ける力を身につけようとしていた。
子どもたちが。それぞれの異能力と知恵を駆使して、殺戮者たちを滅ぼす過程は痛快で、映画としてとても楽しめたけれども、見終わったあとに心に残ったのは、やっぱりティム・バートンの映画だったなあという思いだ。
物語の登場人物たち……主人公も、その両親と祖父も、ミス・ペレグリンと彼女の守る子どもたちも、敵の化け物たちも……すべてが、実の親の庇護を得ることのない、家庭の愛と安らぎを全く知らない子どもたちだった。
美しいミス・ペレグリンは、命をかけて子どもたちを守ろうとするけれど、彼女は子どもたちの成長を微塵も願ってはいなかった。ただ、生かそうとするだけの愛では、子どもたちのこころは、永遠に成熟しない。だから、恋もありえない。
けれども、外の時間の流れからやってきた主人公の存在と、ミス・ペレグリン不在の危機を乗り越えた冒険が、彼らの精神を一気に成長させる。
新たな時の流れの中で、ミス・ペレグリンは、成長した子どもたちと共に、どう生きてきくのだろう。
そこが知りたいと思った。