2008年01月01日 夕方
息子(10歳・重度自閉症)に引き続き、長女さん(11歳・難病児)も書き初めを開始。学校の宿題で、今年は「美しい心」というのを書くのである。
亭主の指導のもと、長女さんが練習していると、息子がぴったり脇にはりついて、じーーーーーっと観察している。
普段は、家族が何をやろうが知ったことじゃないという風情なのだが、字を書くとなると、やはり知らんぷりはできなくなるのだろう。
その様子を見ていて、思い出したことがある。
たぶん、長女さんが三歳、息子が二歳ごろのことである。
その頃には息子に知的障害があるということが、分かっていた。
長女さんが鉛筆を持って字を書き始めると、息子がぴったり体を寄せて座り込み、姉の手元をのぞき込むということが頻繁にあったのだ。
普段は姉の存在など目にも入っていないように見えていた息子が、こういうときだけ、姉に強い関心を寄せるのが不思議で、何枚も写真を撮った記憶があるのだが、その写真がどうしても見つからない。未整理のまま、家のなかで散逸しているのだと思う。
書いている長女さんに興味を示すのだから、息子自身も何かを書きたいのだろうと思い、いろいろと勧めてみたけれど、当時は何をどうやっても、書かなかった。身体コントロールの困難や、知覚過敏、感覚統合異常など、さまざまな「障害」に阻まれて、文字を書くどころではなかったのだろうと、今なら分かる。
でもきっと、あのころから、息子は書きたかったのだろうと思う。
何年もかけて、腕や手のコントロールを改善し、視覚過敏や図形認知の困難を克服して、文字を覚え、ようやくここまでたどり着いたのだ。
長女さんが一通り練習を終えると、息子が、次は自分であるとアピールしてきた。そこで亭主が、いま練習中の「赤い電車」を書かせようとしたのだが……
筆を持った途端、喜々として、ざっと横に線を引き、筆の感触を楽しみながら、さらに数本、線を入れた。

これで完成、であるらしい。
何を書きたかったのかは、さっぱり分からないが、妙な迫力だけはある、と思う。
兄が書いたからには、末っ子(2歳)もやらなければおさまらない。
やる気の炸裂した二歳児が筆を振るっても部屋中が墨だらけにならなかったのは、墨汁の在庫が尽きたからである。
息子は最後まで、書き初め現場に参加しつづけていた。
好物ばかりの食事のときだって、継続して着席することの難しい息子であることを考えると、この関心の高さは、やはり並大抵のものではないと分かる。
明日には近所のお店が開く。
墨地獄になることを覚悟して、息子にも毛筆をやらせてみようと思っている。
(✳︎過去日記を転載しています)
(転載日……2026年1月10日)