湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

マヌケな医療給付制度改革

長女さんは、免疫に関係する持病を持っている。

この病気は根本的に治療法がない慢性病で、医療費の負担も大きいため、小児慢性特定疾患医療給付制度というので医療費の補助を受けることができる。おかげさまで、二歳で発病して以来、どんだけ長く個室に入院しようが高額な薬剤を使おうが、安心して治療に専念することができていた。

 

ところが、この医療給付制度に金がかかりすぎるというので、予算がカットされることになった。比較的軽い難病(なんてあるかい、と思うんだけど)の補助は廃止、もしくは親の収入によって減額し、重い患者の補助を優先しようということらしい。決定までにはだいぶモメたらしくて、国会での審議も延びに延びたようだけれど、昨年度末、とうとうカットが決定してしまった。

 

先月、長女さんの給付の再申請をしに、主治医に書いてもらった書類を持って保健所に行ったところ、受け付けてくれたお姉さんが、ものすごく申し訳なさそうに、

 

「むずかしいかもしれません」

 

と言った。

 

長女さんの持病は難治性だけれど、近年はステロイドが奏効するようになってきて、発病後の入院期間がだいぶ短くなっている。昨年は二度発病したけれど、二度目は主治医の判断で、自宅療養だけで治療することになり、それで無事に寛解してくれた。

 

ところが、新しい給付カットの規定では、半年に三回だか発病・入院していなければ、給付はしないということになってしまったらしい。

 

そこまで頻繁に発病・入院するというのは大変なことで、小学生だと、ほとんど学校に出られないことになってしまう。長女さんは年二回だけの発病で、そのうち一回は入院しなかったけれど、それでも昨年は四十日ぐらい欠席したのだ。

 

その規定を見て、長女さんの主治医は怒髪天状態で怒ったそうだ(私は産後まもなかった頃で、亭主が再交付の話をしに病院にいったので、残念ながら怒髪天の主治医を見られなかった)。


「そんなに頻回に発病することを前提とされたら、我々医者の存在意義がなくなるじゃないですか! 何のために一生懸命投薬に苦慮しながら治療してると思ってんのよ! 発病を抑えるためでしょーが!!」


その当たり前のことを、机の上で規定をこしらえた誰かは、まったく知らなかったのだとしか思えない。難病を持って暮らしている子供たちのことも、医療の現場のことも、きっと、何も知らないのだろう。

 

主治医は県の医療制度担当に怒りの電話をかけたそうである。その効果があったのか、あるいは多方面から苦情が押し寄せたためか、当初はムリだと言われていた長女さんの医療給付は再申請が認められたという電話が、数日前に保健所からかかってきた。

 

まあ、よかったんだけど、どうも「めでたしめでたし」とは思えない。


医療行政とか教育行政とかを実際に取り仕切っている人たちの「ひととなり」というやつが、このごろどうも、うさんくさく思えてしかたがないのである。


昨日だったか、文部科学省の誰かが、「ゆとり教育」を受けて育ってしまった世代に対して謝罪するということをやったらしい。円周率を3.14から3にしたメリットは、どうやらデメリットよりもはるかに少なかったようである。

 

それに、ゆとりの方針に従って作られた小学校低学年の教科書は、現場の先生には大変不評だったようで、私も長女さんの担任の先生に、切々と訴えられたことがあった。

 

「だって教えてもいない文字が、いきなり出てくるんですよ。入学したばかりの時点では、ひらがなの読み書きのできない子もかなりいるのに、どうしろっていうんですかね。こんなもん、ないほうがマシ。私は無視しますよ」

 

いいんじゃないですか、と私も答えた。「ゆとり」を重視した結果、カットされたものは、子供の「負担」じゃなくて、子供への「配慮」だったんだから、仕方がないではないか。

 

撤回したり謝罪したりするハメになる前にそういうことに気づける人が、行政やってほしいと思うんだけど。

 

 

(2005年04月23日)