朝の三時半、息子(3歳・重度広汎性発達障害)に蹴られて起こされた。泣きわめいて、あしをばたばたさせている。
ゆめうつつに「ジュース、飲む?」と聞くと、あしのばたばたが一層はげしくなる。それが全部私に当たる。
エアコンが切れて、部屋が蒸し暑くなっていた。
それで、息子は、のどが乾いて目がさめたのだ。
なのに私がなかなか起きなかったからか、もうすっかり怒っている。
眠気をふりはらって台所に行き、飲み物を取ってきた。息子は怒りに我を忘れていて、すぐには飲まない。あてがわれた飲み物に張り手をくらわし、ふたたび私の胃を狙って、蹴りを入れる。意地になっている。いまさら持ってきても飲むもんかと言いたいのだ。けれど飲まなければ、息子は絶対に眠らない。
エアコンを入れて部屋を冷やし、すこし時間を置いてから、飲み物のストローを口にそっとあてがってやると、いい加減のどの乾きに限界の来ていた息子は、今度は自分を押さえて、一口だけ飲んだ。 まだ怒っているから、私の顔を見ようとしない。私は息子の手に飲み物を持たせてその場を離れた。
もう朝の四時を過ぎていた。
寝るわけにもいかず、パソコンの電源を入れてメールの読み書きをしていると、息子が、 音もなく膝のそばに寄ってきて、私にそっとさわった。 飲み物のおかわりがほしくなったのだ。すっかり落ちついて、やさしいしぐさになっている。
おかわりをわたすと、私の足元に座って行儀良く飲んだ。それからコップを
テーブルの上にきちんと置いて、一人で布団に戻っていった。
このところ、二日に一回は、深夜にこうして起こされる。
息子は、ハンディを持つ子供である。言葉がしゃべれないストレスが、どうしても怒りにまわる。
それでも一年前にくらべれば、ずいぶん押さえがきくようにはなってきたし、私のほうも、だいぶ慣れた。
でも、蹴りが胃に入るのはちょっとキツい。吐きそうだな、吐いたほうがラクかな、などと思っているうちに夜明けがきた。
寝なおそうか、このまま起きてしまおうか、ちょっと悩む。
(2001年6月4日)
※過去日記を転載しています。