お産の翌日から、左目の眼球がうまく動かなくなっている。
そのせいで、ものがすべて二重に見える。
乱視どころではない。目の前の人の顔の上に、もう一つ同じ顔があるのだ。
そのレベルですべてのものがダブっている。
どうしても本が読みたくなって、宮沢賢治の童話集をひっぱりだしてきて布団で眺めたけど、活字が全部多重に見えた。
それでもムリして読んでいたら、セロ弾きのゴーシュがかっこうを叩き出したあたりで、アタマががんがん痛くなった。また熱が出るとこまるので、やめた。
目がなおるまで、寝ながらの読書はおあずけである。
長女さんは、あいかわらず黄色い。
それに、退院間際に光線治療をやったおかげで、日焼けしている。
新生児黄疸というのは、いつまで色が残るものだろうか。
元気はよさそうだから心配ないのだとは思うけれど、気になる。
茶髪で小麦色の肌の乳幼児というのも、なかなかかっこいいけれど、ピンクのベビードレスは全く似合わない。紺色のカバーオールを着せたら、きりっとひきしまってりりしく見えた。
大きくなったらセーラー服がよく似合うようになるかもしれない。
来週には眼科に行ってみようと思う。よく考えてみると、この目、もし治らなかったら、けっこう迷惑である。下方向にしか焦点が合わないから、クルマの運転できないし、家事もあぶない。
テレビやパソコンのディスプレイは、うんと顔を上げて下目使いで見ると、なんとか多重にならずに見えるけど、首とアゴがとっても疲れる。メガネで矯正できるといいのだけれど。
(1996年7月14日)