中島らも「西方冗土」集英社文庫
関西人と結婚して五年になるけれど、ときどき訪れる関西の地は、私にとっていまだに異世界・見知らぬ文化圏のままである。
二十八のトシまでトーホグ地方から出たことのなかった私にとっては、関西人も宇宙人も一緒である。
さすがにに「関西にはヨシモトとアキンドとヤクザしかいない」と思っているわけじゃないけれど、やっぱり分からないなーと思うことは多い。
相互互助と個人主義、ドライさとヒューマニズムの混じり合い方が、なんというか独特で、ときどき混乱する。コトバがよく分からないことは言うまでもない。亭主の出身地域の方々に早口で話しかけられると半分も聞き取れない。人に話しかけられても反応が鈍いから、きっと「アソコのヨメは魯鈍だ」と思われてるにちがいない。
「西方冗土」はおもしろかったけれど、やっぱりヨソの世界の人がヨソの世界のことを書いた本だなーというヨソモノ感はあった。だけどダンナに言わせると私が生まれた東北某県なんかは、
「あれは、日本やない」
そうである。そういうものなのだろう、きっと。
(1996年2月1日)