尾辻克彦「出口」講談社
この短編集は、オビに引かれて買ったのだった。
こういうただの二文字のふつうの言葉でも、おだてると小説のタイトルにな,ってしまう。小説といっても、私のはちゃんと小説になっているのかどうか怪,しいものだが、小説になりすぎるとつまらないという気持ちが、最近はどこの,水道の水にも含まれている。
最後の「最近はどこの水道の水にも含まれている。」に、特にクラっときた。
尾辻・赤瀬川作品の中には、こういうクラっとするようなフレーズがちらり、ちらりと落ちていて、読み進めようととする目を立ち止まらせる。だからちっとも読みすすまない。
表題作の「出口」は、ものすごかった。便意系の破局のドラ,マを小説にしようとしたら、これを越えるのはとても難しいのではないかと思う。
(1996年1月21日)