湯飲みの横に防水機能のない日記

色々壊れてて治療中。具合のよくないときに寝たまま携帯で書くために作ったブログです。ほんとにそれだけ。

今日の一文(一月十五日)

谷崎潤一郎

 

漱石先生は毎朝便通に行かれることを一つの楽しみに数えられ、それは寧ろ生理的快感であると云われたそうだが、その快感を味わう上にも、閑寂な壁と、清楚な木目に囲まれて、目に青空や青葉の色を見ることの出来る日本の厠ほど、格好な場所はあるまい。

 

「陰翳礼讃」

 

 

高校の頃、現代国語の問題文として切り取られた「陰翳礼讃」をよく目にしたけれども、漱石の便通や厠の話が出題されたのを読んだ記憶がない。

 

出題者がシモの話題だからというので避けたのだろうか。

 

 

関係ないけど、昨日の共通テストの英語の問題には、クマムシの肛門(anus)が図解入りで登場していた。

 

極小の世界までも煌々と照らして曝け出すことに躊躇のない令和の時代に、もしも谷崎潤一郎が生きていたなら、眩しすぎて憤死しかねないと思った。

 

 

 

 

 

夢の歌(古今和歌集・在原業平)

 

惟喬のみこの許(もと)にまかりかよひけるを、かしらおろして、小野といふ所に侍りけるに、正月(むつき)にとぶらはむとて、まかりたりけるに、比叡の山の麓なりければ、雪いと深かりけり、しひて、かの室にまかりいたりて、をがみけるに、つれづれとして、いと物悲しくて帰りまうできて、よみておくりける

 

なりひらの朝臣

 

忘れては夢かとぞ思ふ思ひきや雪踏みわけて君を見むとは

 

古今和歌集 巻第十八 雑歌下

 

【意訳】

 

在原業平は、惟喬親王のもとに出入りしていたのだけれども、親王が出家して小野というところに居りましたので、正月に訪問しようと出向いたところ、そこは比叡山の麓(ふもと)だったので、雪がとても深かったのだけれども、無理をして庵室までやってきて、お目にかかったのだけれども、しんみりとして、どうにも物悲しくてならず、帰ってから歌を詠んで贈った。

ふと現実を忘れてしまって、あれは夢だったのではないかと思ってしまうのです。

だって、思いもしませんでしたから。深い雪を踏み分けて、貴方様に会うなどということを。

 

………

 

 

惟喬親王は、文徳天皇の第一皇子だったけれども、母親(紀静子)の後ろ盾が、第四皇子の惟仁親王よりも弱かったために、皇位を継承できなかったという。

 

惟喬親王の母親である紀静子は、紀有常の妹。

そして在原業平は、有常の娘と結婚している。

 

つまり惟喬親王は、業平にとって、妻の父親の甥であり、妻の従兄弟という関係になる(でいいのかな。ややこしいな)。

 

有常も惟喬親王の元に通っていたというから、三人で集まって楽しく過ごすこともあったのかもしれない。

 

また、業平は、惟喬親王の妹である伊勢斎宮恬子内親王と、密通をやらかしたこともある。

 

さらに業平は、自分の舅である有常に、恋の歌を贈ったこともある。

 

君により思ひならひぬ世の中の人はこれをや恋と言うらむ

 

(貴方のせいで、私もようやく思い知りましたよ。世間の人々は、こういう気持ちを恋というのでしょうかね)

 

伊勢物語」第三十六弾

 

くどいようだが、歌の送り先は自分の舅である。

 

 

【ダメな意訳】

 

ああもう、どんな悪夢なんでしょうかね、これは。

 

こんなに貴方との距離が隔たってしまう日がくるなんて、想像もしませんでしたよ。

 

昔はあんなに貴方が近かったのに。

 

たとえ会えない日が続いたって、妻の顔さえ見れば、そこに貴方の面影があったし。

 

貴方の妹も貴方によく似てましたけど、一夜限りの密会だったから、物足りなかったなあ。

 

古びた妻がいろいろと鬱陶しくなってからは、舅の有常さんに会えばよかった。

 

有常さんは男だから、妻よりもずっと濃い貴方の面影を見ることができるしね。やっぱりいいよね、男は。うん。契れないけどね。それはそれで。

 

でも、どんなに似ててもホンモノじゃないんだよね。

 

本命は貴方です。

そばにいたいんです。なにがなんでも。

ドカ雪なんぞに心折れてはいられません。

命ある限り、ストーキングは続けますよ。

 

 

………

 

参考にした本。

 

窪田空穂「古今和歌集(全現代語訳付)」やまとうたeブックス

 

「新版 伊勢物語 付現代語訳」角川ソフィア文庫

古今和歌集(全現代語訳付)

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(二冊とも、現在Kindle Unlimitedで読み放題利用できます)

 

 

夢の歌(古今和歌集・紀貫之) - 湯飲みの横に防水機能のない日記

 

夢の歌(古今和歌集・小野小町) - 湯飲みの横に防水機能のない日記

 

 

入試直前・うど・脳と心…(ねこたま日記)

こんにちは。

 

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長女さん(26歳)は就労支援の日。お仕事をたくさん頑張ったそうだ。

 

息子(25歳・重度自閉症)はいつも通り介護施設通所。いい笑顔で帰宅してきたので、今日も充実していたのだろう。

 

末っ子は、午後から塾で勉強。明日は共通テストの壮行会をしてもらえるそうだ。

 

そういえば、一昨日の夜だったか、末っ子の第一志望の大学の入試課から電話がかかってきた。なんだろうと思ったら、願書につけて出した写真が、前髪で少し目が隠れていたので、撮り直して送るようにということだった。即座にiPhoneで撮り直し、ネット経由で送った。

 

あと一カ月ほどで、入試の結果が全部分かる。

どんな春になるのだろう。

 

末っ子の世代は、幼稚園の卒業直前に東日本大震災を食らい、中学の卒業前にコロナ禍を食らって、いまもその影響下にある。これ以上、何事もないことを祈るばかりだ。

 

 

(_ _).。o○

 

スーパーで念願のうどを発見。

 

薬膳酢で酢味噌を作って、亭主に酢味噌和えをリクエスト。大変おいしかった。

 

また見つけたら買ってこよう。

 

 

(_ _).。o○

 

昨日から読み始めた「脳からみた心」という本が面白くて、今日もウォーキングの時間が短めになってしまった。

 

(現在、Kindle Unlimitedで読み放題利用できる。)

 

脳梗塞などで後天的に引き起こされる言語障害のさまざまなタイプの症例について、言語学的な考察も含めて分かりやすく書いてあるのだけど、ほとんどの症例が、先天的な言語障害を持つ息子の問題に当てはまるのだ。

 

もしも次の人生があるなら、その方面の研究を自分でしてみたいと思うけれども、来世で頑張っても息子の人生に寄与できないので、いま出来ることがないか、精一杯探すしかない。

 

 

今日の一文(一月十一日)

 

 

 

城山三郎

 

それは、昭和二十六年早春のある朝の何でもない偶然、そして、誤解から始まった。五分、いや三分でも時間が行きちがったら、初対面もなく、二人は生涯会うこともない運命であった。

 

「そうか、もう君はいないのか」

 

 

その日、たまたま図書館が閉館していなかったら、最愛の人との出会いはなかったという、物語のような思い出。

 

切ない。

 

 

 

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