今回は、柿本人麻呂の雪の歌。
沫雪は千重にふり敷け恋ひしくの日長き我は見つつ偲はむ
(あわゆきは ちえにふりしけ こいしくの けながきわれは みつつしのはむ)
万葉集 巻第十 2334
⚪︎沫雪(あわゆき)……積もることなく解けてしまう、はかない雪。
⚪︎千重(ちえ)……幾重もの重なり。
⚪︎日(け)……日々。
⚪︎日長し(けながし)……日数が長く経過している。
⚪︎偲ぶ……賞美する。愛でる。
作者は、解けやすい沫雪に、解けずに降り積もれと、無茶なことを命じている。
だいぶ、ヤケクソなのだろうか…
【だいぶダメな意訳】
ふわふわと地面に落ちては、あっけなく消えていく沫雪たちよ。
解けることなく幾重にも降り積もって、あたりを埋め尽くせ。
根性出して、このつまんない風景を、真っ白に変えて見せてくれよ。
え?
無茶言うなって?
わかってるさ。
沫雪に豪雪化しろっていうのは、いたいけなチワワにケルベロス化しろってのと同じくらい、無理だよな。
だけど、恋し続ける日々が重く降り積もっちゃって、もう気持ちの持って行き場が見つからないんだ。
心の中、除雪不能なの。
重くてしんどいの。
ほんと、マジで。
だからせめて、沫雪の奴の本気を見たいんだよ。
そしたら、凍えそうな俺の恋心も、慰められる気がするんだよな。