ハーレクインコミックスは、Amazonの読み放題にたくさんの作品が並んでいるので、つい釣られて読んでしまう。
原作の小説を、漫画の少ないページ数に収めるために、漫画家さんが本当に苦労してるのがうかがえる。
エピソードも設定も、必要最小限まで刈り込んで、なおかつメリハリのある面白いストーリーにするのは、きっと大変だと思う。
でも、その大変な苦労を感じつつ、あちらこちらにツッコミを入れながら読むのが、ハーレクインコミックスの醍醐味でもあったりする(私だけかもしれないけど)。
物語の途中、ヒロインが必ずひどい試練に見舞われるので、読んでいてだいぶイライラするけど、ハッピーエンドが必ずくるので、一緒にストレスを放り出せる。つまり、スカっとする、という効能も若干ある。
さっき読んだ「涙にぬれた口づけ」(瀧川イヴ・ダイアナ・パーマー作)の、イライラの対象は、もっぱらヒーローだった。
ヒロインと結ばれる男性のことをヒーローというのがハーレクイン読解での決まり事らしいのだけど、こいつをヒーローと呼ぶのを憚りたいほど、ダメなイケメンセレブであった。
なにしろこのヒーロー、大牧場の経営者であるにもかかわらず、人を見る目が全くないのだ。
玉の輿を狙ってくる女性たちに辟易しているにも関わらず、まさに玉の輿狙いのハイエナみたいな女性を雇用して、自宅に置いている。
そのハイエナ女性は、事務仕事が全くできないばかりか、最愛の娘たちを寄宿学校に追い払って妻の座に座ろうと画策しているのに、ヒーローはちっとも気づかない。
また、娘たちの養育を任せている家庭教師は、子どもが大嫌いな女性で、ほとんど虐待まがいの扱いをしているのに、そのことにも気づかない。
それに対して、ヒロインについては、最初からむやみと敵視して、なんの落ち度もないのに、ことあるごとにツラく当たる。
ヒロインが死んだ妻に似ていて好きなタイプだから、うっかり油断して付け込まれたくないという理由だったらしいけれども、そのために、なんの落ち度もないヒロインが、とんでもなくつらい目に合うことになるのだから、ヒーローに情状酌量の余地はあまりない。
ヒロインの背負っている人生は、少ないページ数の漫画では到底語り尽くせないほど、暗くて深い。
アフリカで布教していたという両親は、現地で惨殺され、幼いヒロインと弟は、孤児になってしまった。
その後二人は施設で育つけれども、成長した弟は、両親の思い出の残るアフリカで事業を起こし、内乱に巻き込まれ、乗っていた飛行機を落とされて、妻子とともに死んでしまう。
身を裂くような悲しみに耐えながら、職を得て自立しようとしているヒロインを、ひたすら侮辱し、仕事だからと命令して無理やり飛行機に乗せ、弟の死を思い出してPTSDの発作を起こしそうになって周囲の乗客に慰められているのを見ると、事情も分からないままヤキモチを焼いて逆上し、さらにはハイエナ女性が愛娘二人を海でわざとおぼれさせたのを、ヒロインのせいだと思い込んでクビにするという・・・
一応、最後の最後ですべての誤解がとけて、このスカタンのヒーローとヒロインが結婚してハッピーエンドを迎えるのは、ハーレクインロマンスのお約束だから仕方がないとしても、ヒーロー、誰かに十発くらいぶっとばされてもよかったんじゃないかと思った。
たぶん原作小説では、もう少しバランスが取れたお話になっているのだと思う。
お話のヒーローをけなしてばっかりでもしかたがないので付け加えると、瀧川イブ氏は、ハーレクインコミックスのなかでも、かなり好きな漫画家さんである。とんでもないあらすじの話でも、絵の魅力でぐいぐい引き込んで読ませてしまう。
できれば原作も読んでみたいけど……
まだ電子化されていないみたいなのだ。
この表紙の本を、書店のレジに持っていく度胸は、私にはない。(´・ω・`)
(書籍のネット通販は現在自粛中)